皆の先輩シリーズ | ナノ


▼ 未門牙王(3/4)

「どうかしたかい、龍炎寺くん」
「なぜ、人間である貴女にそんなことが出来るんです。仮にすべてなかったことに出来たとしても、それは歴史に対する冒涜だ」
「歴史に対する冒涜、ね。面白いことを言うじゃないか。それになにか問題でもあるかい?」

カガリさんはタスク先輩に対し、さも当然のように疑問を投げ掛けた。
タスク先輩は珍しくたじろぎながらも食いついた。

「それは、正攻法じゃないんですよね? それならそれ相応のリスクを負うはずでは?」
「なに、その辺も含めてどうにかするさ。後始末に関してきみ達は気にしなくて良い」
「っ、どうして貴女は……!」
「カガリ」

タスク先輩の言葉を被せるように声が響き渡る。この場にいた誰でもない人物のものだ。
カガリさんの腰にあるデッキケースから一枚のカードが飛び出し、宙に浮かぶ。声の主は光と共にその姿を現し、降り立った。
薄い水色の髪に、紫色の瞳。以前テツヤのファイトで見たことがあるバディモンスターだ。
恐らく、カガリさんのバディなのだろう。

「おやおや、嫉妬かい――アスタロト」
「そんな生温いものではないと、きみが一番分かっているだろう」
「それもそうだ。それで、アスタロト」

きみはなぜ口を挟んだのかな?
カガリさんは笑っていたが、先ほどまでの穏やかな雰囲気はない。
そのことを察してか、アスタロトが緊張した面持ちになる。

「……本当に、ヤミゲドウと角王のことをなかったことにする気か」
「それは未門くん次第かな」
「未門牙王が望んできみの力を借りた場合、確かにヤミゲドウと角王のことはなかったことになるだろう。……だがその瞬間、未門牙王は――未門陽太の弟は駄目になるぞ」

カガリさんは意外そうにアスタロトを見つめる。
一方でオレは困惑せざるを得なかった。
なぜ、アスタロトが陽太兄ちゃんの名前を口にしたのだろう。つまりカガリさんも陽太兄ちゃんを知っている?
いつ、どこで会ったというのか。
けれどオレはその疑問を投げ掛けることが出来なかった。喉まで出かかっていたが、それを言ってしまったらなにかが終わる気がして、はばかってしまった。
ただ、二人の会話に耳を傾けるしかない。

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