日付が変わる。
もうすぐ、俺が生まれた日になる。
なのに、
なのに!

あの男ときたら、この俺を、電波のない僻地にパシるなんて!
絶対に!どうかしてる!!












♂♀



「今から○○県の方まで行ってきてよ。宿泊先ももうとってあるからさ」

突然いつもの調子で言われた。雇い主である臨也さんに、俺には基本的に拒否権がない。
しかし今は、今は嫌だ。しかも泊まりって事は、明日も出先。
そんなのは絶対に嫌だ。だって、だって明日は、俺の誕生日なのだ。
せめてずらしてくれと言おうとすれば、

「今からだよ、例外は認められないなあ」

女ならばコロリと騙されそうな営業スマイルに、俺はぐぅの音も出なくなった




ここで冒頭に戻る訳だ。
臨也さんは血も涙もないなんて、そんな事知ってたけど!
だからってここまでわかりやすく嫌がらせをしてくるとは思わなかった。
どうせ帰って報告する時には

(「あ、そういえば正臣くん誕生日だったんだね。それは悪い事しちゃったなぁ」)

とかけらけら笑いながら平然と言うのだろう。
せめて沙樹が同行OKであればよかったのに、あの男、1人で行けって、どこまで鬼畜なんだ。
しかし宿泊先だけはなぜか豪華な旅館で、部屋に露天風呂がついていた。大変気持ち良かったのがなんだか負けた気分だ。

「うー臨也さんのばかやろー…」

ばふっと敷かれた布団に顔を埋める

「随分な物言いだね」

少し考えこむ。この部屋には自分1人だけのはずなのに、なぜかよく知った声が聞こえた。

「…………?!」

ガバッと布団から顔をあげ振り返る。

「は、なん…え?」

臨也さんがいました。
なんで?

「俺も露天風呂入りたくなっちゃってさー」

「……」

「まあそれはおいといてね」

突然の訪問にびっくりしすぎて何も言えないでいる俺に、ゆっくり近付いてくると、携帯の待受を見せ付けるようにして言った



「誕生日おめでとう、正臣くん」



時刻はちょうど、19日の0:00

「…あ、……どうして、」

ぱちぱちと瞬きを繰り返し臨也さんを見つめる。

「ん?だって君今日誕生日でしょ?」

「え、そ、ですけど、…じゃなくて」

子供に教えるような優しさで言葉を紡がれ、しどろもどろになってしまう。
本当に聞きたいのはそんな事じゃなくて、

「なに、嬉しくないの」

臨也さんが拗ねたように唇を少し突き出す。少し可愛い。

「あ、や、嬉しい、すけど、なんでここに…臨也さんが?」

すると小首を傾げ、やがて見たこともないようなふわりとした優しい笑顔を見せると、ゆっくりと呟いた。

「だって、誕生日くらい、君を独り占めしたいじゃない」








君を独り占め

(君と俺を邪魔するものは、)(電波でさえも許さない)













企画*愛しの将軍様に参加、提出させてもらったもの






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