葬送

「誰が駒鳥殺したの?それは私と雀が言った」
有名な詩の一端を口ずさみながら、彼女は現れた。長い黒髪に端正な体躯、物語の世界から現れ出たかのような人間だった。
「この事件……解決せしめましょうか?」

そんな陳腐な映画のワンシーンが流れ出たのを見て、僕は溜め息を吐いた。駅前の巨大スクリーン。そこに流れるのは毒にも薬にもならない映像ばかり。もっと有益なことに扱えないものか、と僕は俯いた。すると、足元に小さな毛玉が転がっているのが見えた。よくよく見ると、それは小鳥だった。奇しくも、先程流れていた詩の一片が脳裏に甦る。これは駒鳥ではなく、雀であったが。屈んでその死骸をつまみ上げる。傷だらけで汚かった。それを側の街路樹の根元に降ろす。土葬する訳でも無く、僕はただ眺めていた。この死骸も、いずれ風化して土塊となるのだろう。所詮、僕の覚え知るところではなかった。僕は腕時計を見遣る。そろそろ時間だ。雀に興味を無くして、僕は駅の方へと向かった。後に残された鳥の骸に、鳥が一匹近付いた。小さくつつく鳥を、木の上から幾匹かの鳥が眺めていた。不意に、鳥達が一斉に羽ばたく。間も無く遠くで鈍い音と悲鳴が空を裂いた。

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