数多の成功と一つの失敗

 僕の人生は、輝かしいものである。『神に愛された人間』とは、僕のことを言うのであろう。それほどまでに、僕は『完璧』な人間であった。何の迷いも無く、突然そんなことを言い切る僕を、この文面を読んでいる者は恐らく訝しく見ていることであろう。それも、仕様の無いことだ。実態が無ければ、それは存在しないに等しい。正常な人間ならば、誰もが思うことだ。だから、僕はその実態を今から証明してみせよう。
 僕は至って平凡な家庭に生まれた。この時点で既に『大仰なことを言った割に、大したこと無いじゃないか』と思う者もいるであろう。それは、物語の最初の一行だけ掻い摘まんで、『この物語はつまらない』とまるごと否定していることと同様だと理解するべきだ。横道に逸れてしまった。本題に戻ろう。僕の家庭は、金銭面においては決して裕福では無かったが、両親も兄妹も素晴らしく出来た人間であった。心身共に優秀な人間であった。そのような環境で育まれた僕も、当然優秀に育ったか学業も部活動も、何事にも手を抜かずに取り組んだ僕の周りには、自然と人間が集うようになった。それでも僕は驕らずに、努力を重ねて優秀な成績を修めていった。中には、僕のことが気に入らずに、嫌がらせをする連中もいた。僕はそんな彼らも許し、説得することで新たな友情を築いていった。そして、僕は国内でも有数の学校へ進学した。始めは勉学に励むことに必死だった。だが月日が経つにつれて心に余裕も出来た僕は、交友関係を更に広げていくことにした。そんな中で、僕は運命の出会いを

 ばたん、と乱暴にノートパソコンを閉じる。つらつらと書き連ねていた文章を保存することも無く、電源を切った。僕は椅子に凭れ掛かって天井を見上げる。真っ白い天井板の角に、蜘蛛の巣が出来ていた。その端に蝿が一匹絡んでいるのを確認したところで、突然椅子が引っくり返る。意味も無くぐらぐらとさせていたのが原因のようだ。豪快に頭を打ち付けた僕は、起き上がる気力を無くして無意味に空笑いをする。僕の人生、失敗しか無いな。

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