本日は晴天なり

 昨日までの大雨が嘘のように、今日はいい天気だった。空気が澄んでいる。鳥が心地よさそうに鳴いている。僕は大きな欠伸をする。しんとした冷たい空気が、僕の肺を満たす。気持ちいいな。僕は久しぶりにそんな気持ちになった。僕はカーテンを開く。穏やかな光が、僕の部屋の中に充満した。本当にいい天気だ。僕の心が珍しく躍った。
 僕は朝食を摂ってから外へ出掛ける。空は吸い込まれそうな程青く、雲は全て飲み込まれてしまったのではないかと思う程に全く存在しなかった。人工的な歩道の所々には瑞々しい街路樹。時折吹く風が木々の葉を振り落としていた。美しい街並み。僕はこの街が好きだった。
 小さな看板を掲げている建物の中へ入る。扉に付いたベルがカラカラと鳴り、奥からいらっしゃい、と低い男の声が響いた。ここは僕が気に入っている喫茶店だ。時が止まったかのようなノスタルジックな内装に、どこか懐かしい風味のコーヒー。マスターは寡黙で必要以上に話そうとしない。全てが絵になる、そんな場所だ。僕はいつもの席に座って、コーヒーを頼んだ。
 その時、目の前にノイズが走った。僕は自身の目を疑った。何故だ。考えていく内に、景色は酷いものになっていく。聞こえてくる音も、段々と聞くに耐えないものになっていく。僕は耳を塞いだ。やめてくれ。全てが最悪なことになっていく。どうしてだ、僕は何もしていない、いつも通りに……
 そして、世界は真っ黒になった。

「……何でだよ!」

 僕はキーボードを叩く。真っ暗になったモニターが映すのは、醜い容貌の男のみ。それ以外、もう何も映そうとしなかった。僕の理想郷は、呆気なく消えた。
 静かになった部屋に雨音が響く。外では深々と雨が降っていた。

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