ソファ

 僕はソファに座って待っていた。壁掛け時計はかちこちと時間の経過を告げる。君は未だ帰ってこない。今日は君に伝えたいことがあるのに。携帯を操作するが、着信もメールも無い。時間は無情に過ぎていく。何もすることが無くて、僕は段々と眠くなってきた。ソファに寝転がる。黒く安っぽい生地は、所々毛羽立っていてもこもことしていた。それを指で弄びながら、君の帰りをひたすら待つ。そうしている内に、僕はいつの間にか眠りに落ちていた。何分か、何時間か、それとも数秒か。真っ暗な世界に意識を落としていた中で、唐突に世界が揺れる。ぼやける意識のまま目を開けると、目の前に君がいた。おはよう、と僕が言うと、今は夜中だ、と淡々と返される。僕が起き上がり欠伸をしていると、何しに来たんだ、と直球で問い質される。それは、と言おうとしたところで、はて、と考え込む。僕は、一体何をしに君のもとへ来たんだろう。何か重要な用事があったはずだが……さっぱり思い出せない。眠ったせいだろうか。黙り込んだ僕に、君は溜め息を吐く。そんなことだろうと思ったよ。君はペットボトルの水を飲みながら、僕の隣に腰を落ち着かせる。そこで僕はふっと思い出す。君とただ一緒に居たかっただけなんだ、と。僕は君の手からペットボトルを引ったくり、ぐいと水を飲み込む。おい、と君の戸惑う声が聞こえたが、気にしない。ぷは、と中身を空けたところで、僕は君の顔を見て少し笑う。水が飲みたかっただけだよ。疲労困憊した君の溜め息が、また部屋に響いた。

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