独り言

「変わらないね、君は」

 そう言うと、君は笑ってプリンを一口食べた。カップの中のプリンは、君が底の方から掬い出して食べるせいで、少しぐちゃぐちゃになっている。僕は溜め息を吐く。そう言う君も変わってないと思うけど。一言吐き捨ててから君を眺める。その食べ方とか、不意を突かれた時の顔とか。僕が知る時から一つも変わっていない。君はプリンを一回掻き混ぜてから、また一匙口に入れる。

「そうかなあ」

 唇に付いたカラメルソースをぺろりと舐めながら、君は首を傾げる。大分歳も食ったはずなのに、君の仕草は依然として幼いままだ。

「君は食べないの」

 そう言って、君は視線を僕の前に向ける。君が食べているものと同種のプリン。僕は手を付けていなかった。僕は無言で首を振り、気にしないで、と君に告げる。君は怪訝そうな視線を向けながら、僕に言う。

「やっぱり君変わったかも。前ならお菓子にがっついてたのに」

 僕はそんな下品な人間に見えていたのか。今の君には到底言われたくない言葉だな。そう思いながらも僕は口に出さない。食べたければ食べていいよ。そう言うと、君はぱっと顔を輝かせて、

「ありがとう!」

 と僕の目の前のプリンをかっ拐った。子供のようだ。僕はふっと笑んだ。君は本当に変わらない。そのせいなのだろうか。君は未だに気付かない。僕がもういないということに。

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