今宵は月が優雅に輝いている。白く丸い光を瞳にたっぷりと映して、君はこちらを振り返る。今日の月、大きいね。にこりと屈託無く笑う君に、思わず目を細める。君はまた月を見上げる。満月かな。携帯のカメラで月を撮りながら、君は楽しそうに呟く。今日は十六夜だよ。僕が月と携帯を交互に見ながら話すと、君は不思議そうな視線を送ってきた。何それ。君の携帯の画面は、先程撮っていた月の画像が映っている。しかし現物とは違い、小さな白い丸が真っ暗な画面に穴を開けたように映っているだけだった。君の疑問に答えるために、僕は口を開く。十六日目の月って意味で、確か殆ど満月なんだけど、少しだけ掛けているんだとか。君は携帯に目を移しつつも、僕の言葉に応えてくれる。じゃあもう満月でいいじゃないの、ほぼ満月。君の得意そうな声に、僕は思わず吹き出す。何それ。笑いながらそう言うと、君は携帯のカメラをこちらに向けた。やっと笑った。ぱしゃりと間抜けな音が響く。キミの笑顔、好きだったよ。彼女だった人は、寂しく笑った。

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