揺らぐ

 ふわふわ。ふわり。重力はどこへ行ったのか。ふわふわ。ふわり。僕はただ漂っていた。水中にいるかのような感じもするし、空中にいるかのような感じもする。四肢を動かしてみるが、状況は変わらない。ただ漂うだけ。落ちているのか、浮かんでいるのかもわからない。僕は諦めて身を任せることにした。心地好い浮遊感。もうずっとこのままでもいいような、そんな気分にさせられる。こんな世界の狭間のような場所で、誰とも干渉せずに、ずっと生きていこうか。臆病な考えが芽を出す。どうせ僕は世界からはみ出した人間なのだから。そんな溜め息は泡となってぱちんと消えた。不意に頭上から光が差し込む。暖かで、眩しい光。僕は思わず目を細める。誰かの声が、聞こえたような気がした。誰だろう。光に尋ねようと口を開いた瞬間、口腔に冷たい水が流れ込む。苦しい。もがく。声を絞り出そうとする。しかし、喉は潰されるが如く圧迫され、音を成そうとしない。やがて、光は途切れてしまった。嗚呼、僕の最後の望みが――。僕は揺らめいていた。ふわふわ。ふわり。それ以外に、何もしようが無かった。

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