涼風と愛の終わり

 涼やかな風が吹いていた。風はころころと彼女の髪を弄んだ。彼女は髪を押さえる。セミロングの茶髪は癖一つ無い美しさだった。それに見惚れていると、彼女は桜色の唇を小さく開いた。もう終わりにしようか、私達。ある程度、予測していた言葉だった。僕達の関係は修復出来ない。ありありとした事実だった。それでも、僕は彼女を愛している。今でも。現に、彼女の揺れる髪に見とれていた。しかし、彼女は僕を愛していないらしい。最初から。初めから滑稽な僕の一人遊びでしかなかったのだ。彼女は魅力的で奔放だ。僕は彼女の恋人役の一人でしかなかったのだ。風が一瞬止んだ。彼女の髪がすとんと収まる。艶やかに光を照り返していた。彼女は僕の方を見向きもしない。僕は彼女の言葉に賛同した。そうだね。彼女は小さく、ありがとう、と言った。多分、聞き間違えだったと思う。彼女は僕を愛していないのだから。僕は彼女から視線を外した。風がまた一つ吹いた。鼻先を冷たい空気が掠める。夏の終わりのことだった。

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