ひなたぼっこ時は昼過ぎ、場所は浮世絵中学校屋上。
目を閉じれば直ぐにでも眠ってしまいそうな…そんなぽかぽかとした陽気。
猫の妖怪であるなまえには絶好の日向ぼっこ日和で、屋上はまさに日向ぼっこにちょうど良いスポットなのである。
現在午後1時過ぎ。
つい数十分前であれば雪女やリクオが屋上に居たのだが、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴とリクオは授業のためクラスへと戻っていった。
雪女や青田坊はそれぞれにリクオを見守っており、現在屋上にはなまえただ一人の状態である。
もちろんなまえもリクオを見守らねばならないのだが、猫としての本能故かこうにも天気がよすぎると眠気の方が勝ってしまうのだ。
「あ〜……眠い」
背伸びをし、くぁ…と欠伸をしそのまま手摺に身を預けた。
うとうととし始め、次第に意識が遠のきそうになる。
と、なまえに近づく一つの人影が。
勿論リクオではない。
まだ授業の終わりを告げるチャイムはなっていないし何より数十分前に授業が始まったばかりだ。
「そんな所で寝ると落ちるぞ」
普段ならば黒い法衣を纏い笠を被った男。
――なのだが、目の前に居るのは黒い生地のスーツを着こなし、長い髪を後ろで一つに結った姿である。
「あー…なんだ黒か……ってかなんでいるの?」
普段なら自身含め三人で学校に入り込んでいるのだが今日は何故か黒田坊も学校にいる。
その疑問が自然と口に出てしまった。
「今日はこの陽気だ。何処かの誰かなら日向ぼっこと称して昼寝をしかねんと思ってな。拙僧が様子を見に来たのだ」
「つまるところ、イケてるビジネスマンさんは見張りに来たわけ……」
「そういうことになるな」
黒田坊はなまえの言葉を聞きつつ校舎側から見えづらい位置に腰を下ろす。
そんな黒田坊の様子をしばらくじっと見つめるなまえ。
すると不意になまえは黒田坊の横に腰を下ろす。
「…?」
黒田坊はそんななまえの行動に首を傾げるも、なまえは黒田坊の肩に自身の頭を預け眠ろうとしている。
「様子見に来たんならあたしが眠っちゃっても問題ないでしょ?」
「………は?」
飛躍したなまえの解釈に黒田坊は思わず間の抜けたような声を出してしまう。
「だから、あたしが眠っちゃっても黒が屋上見張っててくれるでしょって言ってんの〜!同じ場所に2人いるんなら片方が寝てても大丈夫でしょ」
「いや、なまえが寝てしまったら拙僧が様子を見に来た意味が……」
一気に持論とも言えるような意見をまくし立てたなまえは、黒田坊の言葉を聞き終えるより早く眠りに落ちてしまう。
屋上には二人きり。
半ば強引に見張りを押し付け眠ってしまったなまえとそんな彼女に寄りかかられている黒田坊。
「今回だけだぞ……」
そう黒田坊はため息混じりに、しかしどこか楽しそうに呟く。
屋上には暖かな陽射しが降り注いでいる。
(ちょ……何勝手に人の寝顔撮ってんの!!)(拙僧の前で寝たのが運の尽きと言うわけだ。これに懲りたらもう人に見張りを押し付けん事だな)(うぐ……)
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