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あるよくはれたひのこと


どうも、あなたの心の天使なまえです。うそです。
初っ端からかっ飛ばしててごめんね!久しぶり!
あれからちゃんと森に帰ってきた俺は、あの日々と同じように毎日愉快に過ごしてるよ。
今日も元気に昼飯に食べる木の実採取なんぞしてます。わたお手製のかご持って。
いや、もう、あいつ真面目に何者?こないだはとうとう俺の靴を作ったんですけど。
俺が森に履いて来た靴よりもかわいくて丈夫だったんだけどどういうことなの。
スキルあがりすぎじゃね?いったい何を目指してんのあいつ。
まあ、作ってもらっても町に行くときしか履いてないんだけどさ。
町にはね、タンパク源とか買いに行ってるよ。日用品とかね。
女の子って大変だよね。俺、この体になって改めて女の子は大切にしなきゃいけないなって思ったね。
そんなこんなで今日も裸足で草の根掻き分けながらお家に帰る途中です。
いやあ、足が軽いっていいね。

いい気になってがさがさ音をたててスキップでもしてれば、スバメ達が慌てて逃げていった。
……どうしたのあいつら、あんな慌てて。
ぼーっと上見上げてたけど、俺原型のポケモンの言葉とか分かんないしな。
こりゃさっさと家に帰るかーと一歩足を踏み出したら、道路の方を歩いていた人間と目があった。
あ、俺は森の中、その人はトレーナー用に整備された道を歩いてます。

地毛だろうか。きれーな金の髪が太陽の光を受けてきらきらしてる。
澄んだ碧眼が驚愕したように見開かれて、俺は脱兎の如く逃げ出した。
やっべえ。やばい。あかんってこれ。あの辺滅多に人間こないから完全に油断してた。
これ、また俺なんかやらかしたら今度こそミロとかわたとか長老様とかに激おこされる気がする。
ハクリ?知らねえなそんなやつ。


「ま、待って!」


女の子特有のきれーな高い声で呼ばれたけど、ここは断腸の思いで逃げる。
何かその子の後ろにめちゃくちゃ美人なお姉さんとかロリとか女の子とかすごく心惹かれるものがあったけど、俺は、俺はそんな誘惑には負けません。
いや、ちょっとぐらってきたけど。
っていうかね、俺割と余裕ね。男の顔はさっぱり覚えてないけどね!

木の根っこぴょんぴょん飛び越えて、とりあえず遠回りして帰ろうかなって思ったら、思いっきり襟首掴まれた。
止めろ!俺今ワンピース!!ちゃんと下履いてるけど!!
っていうか、この美少女の襟首掴むとか何事。俺はエネコじゃないんですけどー!!
美少女の一言で吹き出しそうになったことは秘密だ。


「ああああもう離せえええええ!首が締まる!!」


めちゃくちゃに手足振り回せば、俺の首根っこ掴んでる奴がめんどくさそうにため息ついた。
おいこら、じゃあ離せよ。
全体的に赤と白の、目が青いこいつ。
えーと……ああ、そうだ。バシャーモだ。ホウエンの御三家の一匹の最終進化の。
地味に首筋痛いんだけど、こいつ力強くね?いや、わざとか?なんかわざと臭い。


「もーなんなんだよー……あんたさっきの金髪の人のポケモン?」

「そうだ」

「うお、いきなり擬人化すんなびっくりした」


俺を猫みたいに捕まえてるバシャーモが擬人化したおかげで、さっきより顔が近くなった。
ついでに地面にも近くなった。
白い髪に赤と黄色が混ざってて、青いこれまたきれーな目。
なんだこいつも所詮イケメンか。
無意識に舌打ちが出て、バシャーモのにーさんが怪訝な顔した。けっ。


「榮輝ーさっきの女の子に追いついた……の」

「ム、遅いぞクンショウモが」

「クンショウモ?」


そんなポケモンいたか?
金髪の女の子……多分俺よりちょっと年上のその人が、俺達を見て見事に動きが固まった。
ぱかっと口と目を開いている。
愛らしいに分類されると思うが、榮輝と呼ばれたバシャーモのにーさんはアホ面と馬鹿にしてた。
女の子にそんなこといっちゃダメです。同じ目にあいたくないから言わないけど。


「え、えええええ榮輝!!」

「えが多い」

「すいません!でも女の子の襟首掴むのはだめ!!」

「文句あるか?うん?」


ぎりぎりと金髪の姉さんのつま先をかかとで踏んでるバシャーモのにーさんはとっても言い笑顔でした、まる。
じゃねえよ。何だこの人達、超賑やか。
嫌いじゃないけどな、そういうの!


「ねーさんら、どうしてこんなとこいんの?」

「お恥ずかしいのですが……森の中で迷ってしまったんです」

「え、迷っただけ?」


ピンクの髪の美女の答えに、俺は呆けたような声をあげた。
それにきょとんとしたのは向こうの方だ。
だよね、俺思いっきり逃げたもんな、めんご。


「だけってどういうことですかい?」

「や、またバカと変態みたいなのが来たのかと思って」

「バカと変態!?なんねそれ!?」

「僕達そんなんじゃないよー!!」


だからごめんって言ったじゃんか、心の中で。
にしても白髪と水色のアホ毛のにーさんはいい反応してくれるな。
とてもいいと思います。主に俺の愉快度的に。


「おーいそっちの金髪のねーさーん」

「え、私?なにかな!」


未だにバシャーモのにーさんにいじめられてたねーさん呼べば、好機とばかりにこちらへ顔を向けた。
わあ。素直でかわいい。俺もこんな純粋な子が近くにいればよかったのに。
俺は未だに、そう未だににーさんに首根っこ捕まえられたままの状態でねーさんに向かって首を傾げた。
ははは、この数年で俺は自分をかわいく見せる方法を会得したのだ!嬉しくない。


「俺を下ろしてくれたら出口まで案内したげる」

「ほんと!?」

「ほんとほんと」


だから下ろして?
って言葉を続ける前にぐーと盛大な音が響いた。
おふう、俺の腹の虫が限界だって言ってるぞちくしょう。空気読め。
まあ太陽の位置からしても12時過ぎたしなあ……しょうがないかなあ。
めっさ見てくる皆さんの視線が痛いです。あ、こら微笑ましそうにこっち見んな。


「……とりあえず昼飯食ってからでいいっすか」


反対する人はいませんでした。
くっそ恥ずかしい。


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