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「ただいまー」

「おかえ、りいいいいいい!?」


木と木の間にあるマイホームに帰還の挨拶をしたら、めちゃくちゃいい声で叫ばれた。うるさい。
何年たっても二本のアホ毛をぴょこぴょこさせてるわたは、俺の背後を指さして目を見開いていた。
とりあえず人に指さしてはいけないので、指の可動域とは逆に指を曲げてやった。
痛みでかはっとこちらの世界に戻ってきたわたは俺の肩をがっしりと掴んだ。おかえり。
そういえばわたと麗音にーさんって似てるよな。水色の髪にアホ毛二本とか。同じ種族?
あ、自己紹介は道中済ませたよ。


「なまえ!あの人達は誰!?人間じゃ…!」

「人間以外の何に見えるんだよヘタレ」

「どうして連れて来ちゃったの!?あれほどだめだよって言ったじゃないか!!」

「仕方ねーじゃん、迷っちゃったらしいんだもん」

「そんなかわいい言い方してもだめ!」

「チッ」


後ろのライラねーさんらに警戒心ばりばりのわたは、俺の頭を抱え込むようにしてみんなを睨み付ける。
おいこらやめろ。この人達いい人だから。
という意味を含めてわたの脛を蹴り上げる。
思いがけないところからの攻撃に、わたはたまらず脛抱えて蹲った。

たたたたーんたーんたーんたったたーん。
なまえのレベルが1上がった。
両手を上げて勝利のポーズを取ってたら咲闇にーさんが慌ててわたに駆け寄ってた。
いい人だな、白髪のくせに。


「こいつ、チルタリスの綿毛
綿雲ってあだ名だからみんなわたって呼ぶよ」

「逆!なまえそれ逆!綿雲が名前!!」

「チルタリス!?僕もだよ!!」

「え、そうなんだ!」


おお、当たった。
同族が見つかってわたの警戒心が薄れたのか咲闇にーさんの優しさに絆されたのか。
わたはへにゃっと気の抜けた笑みを浮かべた。
そんなわたに瑞稀ねーさんがそっと手を差し伸べた。


「大丈夫ですか?わた、」

「ひっ」

「え」


瑞稀ねーさんの美しい手が触れるか触れないかの位置に来たとき、わたは腰を抜かして短い悲鳴をあげた。
そしてとても腰を抜かしたとは思えないほどの速さで家の端っこまで後ずさった。
また出たか、わたの病気。
中途半端な位置で止まった瑞稀ねーさんの手をちゃっかり握って、俺はにこりと笑いかけた。


「気にしなくていいよ瑞稀ねーさん」

「でも今の怯えようは少し……」

「大丈夫、わたは女性恐怖症なだけだから
触ろうとしなければ割と普通だから適度な距離を持って目を合わせなければ問題ないよ」

「野生動物かなんかか!」


ある意味野生動物だよね。野生のポケモンだし。
にしても咲闇にーさんはおもしろい……。
こう、弄り倒したくなる感じだよね。


「ちなみにわたは齢十歳の時に童貞……じゃなくて筆おろしでもなくて女の人に襲われて女性恐怖症になっちゃった」

「隠しきれとらんし!!」

「どうていって何ー?」

「筆おろしって何でしょうか咲闇にいさま!」

「よわいって何ー!?」

「ほらこうして純粋な子が興味を持った!!」


てへぺろ。
雷瑠と泰奈は予想出来たけど麗音にーさんまでとは思わなかったな。
……頭弱い?


「あらあら、賑やかねえ」

「ミロ!!」


我が女神がご帰還なされた!
とりあえず抱きつきにかかったらミロもぎゅーっと抱きしめ返してくれた。
うはー!幸せ!!
後ろになんか白いの見えるけど知らねえ。誰だお前。


「この人達森で迷子になってたから連れてきた!昼いっしょに食べてもいいよね!?」

「ええ、もちろんよ!」

「やった!ありがとう!!
あ、こっちはミロカロスのミロ!俺の保護者!」


ライラねーさん達にそうミロを紹介したら、ミロはにっこりときれーな笑みを浮かべた。
ミロの紹介を聞いたライラねーさん達は驚いたように目を開いた。
お?ミロのきれーさにびびったか?


「私もミロカロスなんですよ」

「そうなの?ふふ、私以外のミロカロスに会うのなんて初めて」


頬に手を当てて微笑むミロと美しい笑みを浮かべた瑞稀ねーさん。
楽園はここにあった。
思わずぐっと拳を作った俺を咎める奴なんていないだろう。
いたら俺が殴り飛ばす。


「そう言えばそっちの人はどちらさまなんですかい?」

「え?あのアブソル?ただの近所のおじさん」

「近所のおじさん!?」


分かりやすくへこんだハクリに俺は満面の笑みを浮かべた。
ミロと二人で出かけた嫉妬とか、そんなことねーし。
三日くらいそこでキノコでも生やしてろ。


「なんか、なまえちゃんって、」

「なまえでいいよ、ライラねーさん」

「ありがとう、なまえ……なまえってさ」

「おう?」


清々しい顔でハクリを見下ろしてれば、なんかもったいぶってるライラねーさんに声かけられた。
なんだろう、言いにくいことか?
じっとライラねーさんの顔見て続きを待つ。
やっぱライラねーさんってきれーな色してるよな。


「榮輝と似てるね?」


思いも寄らないその言葉に、俺は一度呼吸を止めた。
似てる?似てるとは見た目じゃないよな?
じゃあ中身?
今まで榮輝にーさんを思い出してみる……ふむ。


「俺も榮輝にーさんとは仲良くなれそうだと思った」

「フム、貴様と組んだら愉快そうだな」

「やめて!!」


めっちゃ力強くライラねーさんに止められた。解せぬ。

今日はこの辺まで。
この後?この後は咲闇にーさんのおいしい手料理食べてわたと麗音にーさんとハクリと咲闇にーさんいじくって、森の出口まで丁重にお送りしたよ。
ばいばいって手振ったらライラねーさんがおっきく振り返してくれた。
嬉しかった。



End


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