7th! | ナノ


最上級の幸せ



自然と速まる足と鼓動を落ち着けたいところだったけど、どうやらそれは無理そうだった。
走るために邪魔な、俺にとっては重たい靴を脱ぎ捨てる。
久しぶりの地面の感触にどうやら足裏は悲鳴をあげたようだけど、俺の心はただただ弾んでいた。


「あれ?誰もいねえ……」


てっきり一人くらいいるかと思った住処には、予想を裏切り人の影もポケモンの影も見えない。
三年とちょっと暮らした住処はあの時とちっとも変わっていなくて、何だか懐かしくなった。
隅の方に見慣れない箱を見つけた。中身は、小さい時に俺が遊んでいたおもちゃ達。
丁寧に作られたそれは、今手に持ってみても丈夫でまだまだ現役だった。


「ここにいないんなら……やっぱり湖かな」


手に持っていたおもちゃを箱の中に戻して、ついでに脱ぎ捨てた靴も拾って住処に置いておく。
こうすれば帰ってきた誰かくらい気付くだろ。
身軽になった足で、俺はあの綺麗な綺麗な湖へ向かった。

森の中も何一つ変わっていない。
木々の間から差す木漏れ日も、柔らかい土の臭いも何もかも懐かしい。
視線を感じて横を見れば、まだ小さいジグザグマが二匹いた。
思わず懐かしくなって手を振れば、逃げられた。
当たり前か、多分あの小ささじゃ俺のこと知らないだろ。

俺の始まった場所、119番道路にある綺麗な澄んだ湖。
そっと近づいて、中を覗き込んで、恋いこがれた影を見つけた。


「―――ミロ!!」


そして俺は、シオンは、美しい湖に負けないくらい美しいその影の名を呼ぶんだ。




「ただいま!!」


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