7th! | ナノ


02



「シオンー!」

「わたにいー」

「「あそびにきたぞー!!」」


泣いちゃったわたの頭を、アホ毛がへたるように撫でていれば住処の入り口からジグザグ兄弟が飛び込んできた。
仲良しだな、お前等。
よく見たら、ジグがまた薬草片手に持ってた。怪我ならもう治りましたよ?ジグさん。
そしてザグは何で手ぶらなんだよ。兄貴に花持たせようって魂胆かお前、止めろフラグ立つだろ。


「わたにい、きょうはおてだまか!」

「シオン、ジグがやくそうもってきたよー」

「ば、ばかかザグ!もってきてねーよそんなん!!」

「あさからひとりでさがしてたじゃんかー」

「さ、さがしてねーし!ザグおまえそろそろおこるぞ!!」

「うわージグにぶたれるー」


ザグの言葉を皮切りに、双子は同時にポケモンの姿に戻るとぐるぐると俺らの住処で追いかけっこし始めた。
止めろ、埃立つだろ。
しかも二人の見分けが着かない。ぐるぐるぐるぐる回ってくれるおかげで俺の目もぐるぐるだよ。
人型でもなかなか見分けつかないのに、ポケモンの姿とかもう同じ生物が二匹いるとしか思えない。
……あ、種別的には同じ種なのか。あいつら。


「シオンシオン、」

「なに、わた」

「どうしたの、あの二人?いきなり喧嘩して……」

「しらね」


このことに関してはシオンちゃん、全くの無関心でいかせてください。
下手なこと言って本当に下手なことになっちゃったら、もう目も当てられない。
ほら、初恋って甘酢っぱい思い出ってよく言うし?ジグにも甘酸っぱい思いして貰おうぜ。
俺相手だとどうも甘酸っぱいっていうより苦渋いって感じになりそうだけど、それも経験だよな。
……何で俺、自分で自分を貶してるんだろう。むしろ被害者、俺じゃね?


「もうおまえらうるさい、はつじょうきのねこか」

「シオン!?だからそう言う言葉いったいどこから……!!」

「ねこってなんだ!?」

「ねこってなにー?」

「「教えろ、シオンー!!」」


え、ほ乳類のにゃーにゃー鳴く動物だよ。春になるとうるさいよね。
そして双子、お前らそう言う疑問があるときは本当に息ぴったりだよな。
大人になってもそれ続くのかな?シオン、ちょっと気になる。


「ねこってのはー……」

「……あっちの方から話し声が聞こえなかったか!?」

「ああ、聞こえた」

「おい、この辺りじゃないか?」


俺が双子二人の質問に答えようと口を開いた瞬間、住処の外で人間の男の話し声が聞こえた。
思わず四人で青ざめた。明らかにここを探してる。
わたとジグとザグが人型からポケモンの姿に戻り、住処の入り口の方から外を伺っている。
俺はと言うと、わたに住処の奥の方へ追いやられていた。
ポケモンにはなれない俺がここにいたら、明らかにおかしいからだろう。
わたに促されるまま、俺はなるべく小さくなるように膝を抱えて蹲った。


「あ、ここにポケモンの住処があるぞ!」

「チルー!!」

「「グマー!!」」


ひょいっと男が住処を覗き込んだ瞬間、わたとジグとザグはそれぞれ人間に飛びかかっていった。
外からは三人の男の声がしている。いきなり飛びかかったわた達にかなり驚いているらしい。
しばらく、悲鳴とわた達の鳴き声が響いている。
思わず顔を上げた所に、運悪く住処の中を覗き込む男と目があった。
その腕にはわたがじたばたと藻掻いていた。恐らく取り押さえられたのだろう。
この間来た男とは違って、今日来た男達はわた達を捕まえはしたものの攻撃はしなかった。


「あっ、」

「お、女の子……!?本当にいたのか!?」


男は俺を見て、目を見開いて驚いた表情をした。
この状況で人型になって蹲るポケモンなどいないと判断したのだろう。迷いなく俺を人間と断言した。
いやでも、本当にってどういう意味だ。俺のこと、どっかから漏れたのか?


「何、本当にいたのか!?てっきりあのハンター達のデマだとばかり……」

「とにかく、保護だ
ポケモン達をあまり刺激しないようにな」

「ああ」


どこかと思ったらこの間のハゲとロリコンでした。
あいつらマジでろくな事しねえな!あぁあああありえねえ禿げろ!!
しかも今更俺を保護!?
まあ確かに人間が森でポケモンに育てられるとかあっちゃいけないもんな。でもいらない。
今更そんなの、いらない。
男達の手が俺に伸びる瞬間、わたがぴかっと光った。人型になった。


「わっ!擬人化!?」

「シオン逃げて!」

「で、でもわた……!!」


いきなり体重の増したわたを支えきれず、わたを抱えていた男はわたを地面に落とした。
落とされたわたは、そんなこと意にも介さずに男の足止めにタックルをかましていた。
今までにない、わたの顔に少し怖くなる。でもわた達を置いてはいけない。
ジグとザグは既に男達の手に捕まえられていた。思いっきり抵抗はしているが、それは藻掻くだけで終わっている。


「早くしろシオン!!」

「!!」


ぐずぐずしていた俺は、初めてわたに怒られた。
びくついた体は、反射的に住処を転げ出て森を走っていた。
背後からは、わたの鳴き声が激しくなっていた。


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