7th! | ナノ


かぞくということ



「シオン、儂が朝何と言ったか覚えておるかの?」


ハロハロ、シオンだよ。こんにちは。みんな元気?
俺?俺はね、今めっちゃお怒りな長老様の前で正座してるよ。
俺の脳内めっちゃ軽いけどね、結構焦ってるんだよ。信じて貰えないと思うけど。
だって長老様ったら、怒鳴ることはしなくて淡々と本当に淡々とお説教してくるんだもの。
表情も、いつも柔らかいのに今は無表情だし。THE無表情って感じ


「聞いておるかの?シオン」

「き、きいてるきいてる!」


しかも俺の思考がちょっと逸れたことにもすぐ気が付く。
何故?何で分かるの長老様。エスパー?エスパーなの?長老様。

……まあね、今回はね本当に俺が悪かったと思ってるよ。
だって勝手に出て行って事態ややこしくして、おまけに森のみんなに迷惑かけちゃったし。
でもミロは見捨てられなかったんだよ、長老様。
だから俺の返事にため息つかないで、ちょっと傷つく。


「ミロカロスのことが心配だったのは分かる
シオンはミロカロスに懐いておるからのう」


懐くって、それなんてポケモン的な言い方。
まあ、確かに懐いてますけど。ミロ大好きですけど。


「しかしのうシオン、シオンがミロカロスを心配するのと同じように儂らもシオンが心配なのじゃ
シオンが居なくなったと分かった時は、それはもう肝を潰したものじゃ」


しかし、次に続いた長老様の言葉で俺の行動がいかに馬鹿だったかよく分かった。
分かったし、俺がみんなにそんなに思われてるなんて知らなかった。
そう思うと、さっきまであんまり感じてなかった罪悪感がむくむくと沸いてきた。
自然と顔を俯けてしまう。


「……ごめんなさい」

「良い良い、シオンは良い子良い子じゃ
後で森の皆の所に顔を出しに行くのじゃぞ、皆心配しておる」

「……うん!」


素直に謝れば、長老様は笑って許してくれた。
よしよしと、俺をこの森に迎え入れてくれた時のように頭を撫でてくれる。
なんか、すっごいくすぐったいけどとっても嬉しい。

だからかな、俺ってずっとここにいてもいいのかなって、思うんだ。


「ちょうろうさま、ミロは?」

「ミロカロスか?ミロカロスならば、いつもの湖に居るじゃろう」

「そっか、ありがとう!」


長老様にミロの居場所を聞いてみれば、すぐ返事が返ってきた。

ミロって元々、ずうっと湖で暮らしていたらしい。
それが、俺を拾った時に湖から森の中に住処を移したんだって。
それってやっぱり、俺が水の中じゃ生活出来ないからだよなあ。
俺、ミロにもめちゃくちゃ迷惑かけてるよ。情けないなあ。


「ミロカロスの元へ行くのなら、気を付けるのじゃぞ」

「うん、ちょうろうさま!またね!」


長老様はいつも通り、にこにこと笑みを浮かべて俺に手を振ってくれた。
俺も目一杯手を振り返す。
取りあえず、ミロの所へ行くために鬼ごっこして強制的に慣れた森に足を踏み入れた。
森はいつも通り、静かで温かい。


「あ!」

「シオンー」

「「どうしてここに!?」」


さくさく森を進んでいれば、そこには人型で何かを探しているジグとザグがいた。
余程必死に探していたらしく、二人は俺が近づくまで全く俺に気が付かなかった。
珍しい…いつもは俺が二人に気付く前に俺に気が付くくせに。
二人は慌てたように、その手に持ったものを後ろ手に隠している。
俺が見るに、草だった。


「どうしてここに、はシオンのセリフ
ジグとザグはなにしてんだよ」

「べ、べつに!?」

「なんでもー」

「「シオンのためにやくそうさがしてたりなんかしてねーぞ!!」」


お前らいったいどこのツンデレだよ。
じゃなくて。
え、俺?俺のため?俺、病気も怪我もしてねーぞ。
……あ、怪我はしてたわ。擦り傷いっぱい作ってたわ。


「シオンのためにやくそうさがしてたの?」

「ち、ちがうっての!」

「そうだよー」

「お、おいザグ!なんでいうんだよおまえ!!」

「だってジグ、すなおじゃないんだもーん」


こいつらが三言目に声を揃えないのなんて珍しい。しかも言い合いまでするなんて。
そしてジグは素直じゃないんだな、俺達三年のつき合いだけど今初めて知ったよ。
あれだよな、今のジグって男子がちょっと気になってる女子にちょっかい出してる図に似てるよな。
……ん?これだと女子役って俺になる、のか……?


「ジグ、ザグ……」

「な、なんだ!?」

「どうしたのシオンー」

「「かなしそうなかおするなって!」」


でも次の瞬間には、またいつもみたいなしゃべり方に戻ってた。戻るの早くね?
わたわたと腕を振って慌ててる二人は、ぺたぺたと俺の頭や背中を撫でている。
何だ、俺が大人しいのがそんなに珍しいのか。ちょっと失礼だぞ。
俺だって感傷的になることだってあるっての。


「なんでもない!
おれ、これからミロのとこにいかなきゃいけないからさ」

「そっか……?」

「じゃあやくそうはシオンのすみかにはこんでおくねー」

「だからザグ!やくそうなんてつんでないって」

「またあとでねーシオン」

「ザグ!!」


いつも割とぼーっとしてるザグがジグを振り回してる。ジグって弄られキャラだったんだな……。
にこやかに手を振るザグに一応手を振り返し、俺はまた森散策へ戻った。
……ジグが真っ赤になってたのは、置いておこう。
初恋って叶わないものだよね。


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