7th! | ナノ


03



「……はっ、もう終わりかお嬢ちゃん?」

「うるせー、いききれてんぞおっさん」


にやにや笑みを浮かべるバカにイラッと来た。言い返したことに後悔はしてない。
ただバカの額に浮かんだ井桁マークに、寿命は縮んだかなとは思った。


「ふん、最後まで生意気なガキだったな」

「まだしんでない」

「これから死ぬんだよ!!」


背後の湖には見覚えがあった。むしろありすぎるくらいだ。
だってここ、俺がミロに拾って貰った場所だし。
あれから一回も来たことなかったけど。ミロが危ないから来るなって言ったからさ。
うわー。
最後が俺がこの世界で初めて落ちた場所って、何その出来すぎた話。ちっとも笑えない。


「えっ、殺すの!?殺すくらいなら俺にちょうだい!!」

「おまえのになるくらいならいさぎよくしぬ!!」

「……だとよ」


いやだよ、ロリコンのものになるとか。R-18まっしぐらじゃんかよ。
闇落ちエンドとか誰が期待してんの。
この小説のコンセプトは「見た目は子ども、頭脳は思春期の美幼女が毒吐きながら美女のヒモになる」だから!!
決して!精神的ホモのくんずほぐれずが見たいとかそういうんじゃないから!!

……やべ、ここ全年齢対象なの忘れてた。これちょっとアウトだったかもしんない。


「ていうかなんでいきなりころすころされるのはなしになったし」

「な、成り行きだ!!」

「ふざけんなハゲ!!」

「ハゲてねえ!!行け、グラエナ!!」


成り行きで殺されるとか何それ。抗議すれば逆ギレられた。
俺ちょっと余裕ぶっこいてるけど、流石にもう無理。
散々騒いだけど誰も見つけてくれないし。そりゃそうだ、長老様が直々に今日は隠れてろって言ってたし。
これも長老様の言うこと聞かなかった俺のせいか。
灰色の狼が突っ込んできた。止めろ、お前のタックルとか受けたら俺死ぬ。死んじゃう。


「う、あ……こわいよ、たすけてミロ!!」


死ぬって思った瞬間、すっごい怖くなった。
だって俺、前は訳分かんない内に赤ん坊なってたし。死って体験してないし。
人間極限になると何するか分かんないね。散々守るって言ってたミロの名前叫ぶし。
俺の体、情けない程震えて一歩も動けないし。

その瞬間、俺に噛み付いてやろうと口を開けていた狼に向かって滝の様な水が襲いかかった。
……え、何事?


「ぐ、グラエナ!?」

「今のは“ハイドロポンプ”!?何故!?」


“ハイドロポンプ”ですと!?え、それってかなり高火力の水タイプの技じゃなかったか?
ポケモンでもかなりレベルないと覚えない技じゃ…。
それが、俺の背後から俺の目の前の狼に向かって放たれた。
ってことは俺を計らずとも助けてくれた恩人は俺の後ろにいるってことで。
俺がそっとそっちを振り返る前に、すべすべとしたものが俺に巻き付いて抱き上げた。


「うっわあ……!」

「……ミロ?」


俺を心配そうに見つめている、この綺麗な魚。見覚えある。
三年前、この場所で俺を見つめてた魚だ。ってことは、


「ミロ?ミロなの?」

「ミロ……!」


俺がそう聞けば、嬉しそうに鳴いてその美しい顔を俺にすり寄せた。
うおあぁああああミロおおおおお!!やっと見つけた!よかった無事だった!!
感極まって俺もミロの頭をぎゅうぎゅうと抱きしめた。それにまたミロは嬉しそうにミロミロ鳴く。
よかった……!怪我もしてなくてよかったけど、俺もよく一発でミロのことを言い当てた!
何で分からないのって思うだろう?俺あの時からミロのポケモンの時の姿、一回も見てないんだよ!!


「グラエナ……!しっかりしろ!!」

「見ろ、あそこにいるのミロカロスだ!」

「ああ、やっと見つけたぜ119番道路のミロカロス!!」


何だあの小物共、まだいたのか。
俺とミロの感動の再開を邪魔するとは、こいつら許せん。
てか何?お前らの捜し物ってミロのことだったのかよ。
渡すか、ミロは俺のだ。


「グラエナ、“かみつく”!」

「お前もいけシザリガー!“クラブハンマー”」


狼の次はカニが出てきた。……最近カニ食ってねえなあ……。
じゃねえよ、俺。いつもの調子取り戻して来たのはいいけど、うん。そんなこと考えてる場合違う。

ハゲとロリコンがあぁあああああ!!
俺のミロ相手に2対1とはどういう了見だ!今すぐ毛根毟り取るぞこら!!
何かこれも違うような気がするけど仕方ない!だって、攻撃俺にも向かって来てるんだもん!!
まただもんって言っちゃったよ、ごめん!それくらい混乱してんの俺!!
だってまだ俺、ミロに巻き付かれてるからさ!避けるどころか防御もできねえよ!


「み、ミロあぶない!」

「ミーロ」


俺がわたわた暴れていれば、ミロは安心させるようにくすくす笑った。
あ、美しい。
こんな時、しかもポケモンの姿でも美人とか流石ですわ。

俺をさらにぎゅっと抱きしめると、ミロはぱかっとその造形美溢れる口を開いた。
一度大きく息を吸うと、次の瞬間ジェット噴射機以上の威力で水を吐き出した。
……あ、さっき俺を助けてくださった“ハイドロポンプ”はミロが打ったものでしたか。そうですか。
マジでか。逞しすぎねえ?ミロさん。


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