7th! | ナノ


めがみ、おこる



今日は朝から嫌な予感がしていた。
どうして、と聞かれたらなんとなくとしか言えないけど。

朝、柔らかいベット擬き(わた作)の上で目を覚ましました。
住処からちょっと離れた湖でぱちゃぱちゃ顔を洗いました。
俺がいない間に、いつものように現れた白狸に食前の運動として喧嘩売りました。
いつまでもミロにびくびくしてるいわたに一発喝入れました。
朝ご飯を食べて、今日も出かけていったミロを見送りました。
ここまではいつも通りでした。

さて、今日もジグザグツインズがそろそろ来るだろうなって思ってたら、やってきたのは長老様だった。


「今日は住処から出てはいかん」


いつも優しい長老様らしくない、厳しい顔で言われた。
驚いたのは多分、俺だけじゃない。わたもハクリも固まってた。
長老様は一度俺達の住処を見渡して、また厳しい顔をした。


「ミロカロスはどうしたのじゃ?」

「み、ミロさんでしたら、いつものように出かけられましたよ……?」

「しまった、遅かったの……!」


どもったわたの言葉に、長老様が苦々しげに呟いた。
何かやだ、長老様怖い。
思わずハクリなんかの服の裾を握ってしまった。
何でよりによってハクリ。そこはわたにしとけよ、俺。
ハクリはそんな俺の行動にちょっと嬉しそうに笑って、俺の手を握ろうとしてきた。
いや、そこまで求めてない。だから拒否。
ハクリの手払ったらしょんぼりした。うざい。


「長老、ミロがいなければ何かまずいことでもあるのか?
それに、住処から出るな、なんて」


誤魔化すように話に加わってんなし。
そんなにショックか、俺に拒否られたことが。
ハクリの言葉に、長老様は俺を一度見て躊躇した。
え、何……?俺に関係あること?


「人間が来たのじゃ」

「にんげん……?」


それ、俺の同族やーん。
関係あった、めっちゃ関係あった、むしろ関係ありまくりだった。
てかね、長老様が人間って言った瞬間ね、わたとハクリがびしりと固まったよ。
え、何々?俺の同族来ちゃうとそんなにヤバい感じ?
どうでも良いけどにんげんといんげんって発音似てるよね、幼児の舌だと噛みそうになる。
最近インゲン食ってないけど。ポケモンワールドにインゲンあるのか知らないけど。


「にんげん、きたらだめなの?」


わたとハクリが異様に緊張してるし、長老様もずっと怖い顔してるし、ってことで素直に聞いてみた。
そしたら三人共揃って、「あ、ミスった」って顔しやがった。
……今の短時間で俺の存在忘れてたとか、何か悲しくなるから止めろよ?


「いつもなら何ともないんじゃよ」

「そ、そうだよ!来ちゃいけないことはないんだ」

「ここはキンセツからヒワマキを繋ぐ森だからな」


キンセツとヒワマキってどこよ。

ってそこじゃない。
その慌てようからしてあれだな?いつも来るようないい人間じゃない方が来たんだな?
幼児は騙せても俺は騙されねえぞ。だって俺もう二十歳越えたし。
悪い人間って、ここじゃ具体的に何するんだ?
思い出せ俺、遥か昔の記憶を!赤緑と金銀クリスタルの悪役は何をしてたか……!
悪役の名前すら思い出せないけど、まあそこはいいや。
とりあえず、具体的な悪事!

……シオンタウンのトラウマしか出てこなかった。軽く鬱だ。


「長老、俺がミロを探しに行く」

「お、おれも!おれも行きます!!」

「ならぬ、今回の相手はまずい」

「ならなおさら……!」


おう、何か言い争ってるとこ悪いけど俺行くよ?行っちゃうよ?ミロ探しに行っちゃうよ?
いい?いいよね?異論は認めない!!
だって何か嫌な予感するんだもん!俺がだもんとか言っても気持ち悪いけど。
シオンタウンのトラウマってあれじゃん!幽霊でシルクスコープでガラガラだろ!?
まずいよ、まずいって。悠長にしてたらミロ死んじゃうって。
何でそこまで思い出せて悪役の名前思い出せないんだろうね、これもあの白髪のせいか?
ふざけんな禿げろ。

っつーわけで、行ってきます。
大丈夫、夕飯までには帰ってくる。多分。






「今日来たのはポケモンハンターなんじゃ、捕まったら売られてしまうのじゃ」

「ハンター……!!」


長老の言葉にハクリがギッと眼光を鋭くした。
そんなハクリにびくりと体を震わせた綿雲は、はたと辺りを見回した。
そこにあるはずの小さい女の子の姿がない。


「シオン……!?」


綿雲が気が付いた時には既に、シオンは住処から出て行った後だった。


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