7th! | ナノ


04



結果として、あの白い獣は無事に助かった。
長老様直々に怪我した白い獣と俺達をその広い背中に乗せ、みんなの元へ連れ帰った。長老様……飛べたんだな。
体力の限界だったのか、ぐったりしていた白い獣の手当は、なんと我が女神ミロが行った。
献身的なミロの手当……って言うか木の実食わせたり薬草で薬作って塗ったりしたら、白い獣は三日後にはピンピンしてた。
何でそんなに回復力高いの?俺、木の実が回復アイテムって知らなかったんだけど。

ああ、何で俺がこんなことつらつら心内で喋ってるかって?
件の白い獣が今、俺の目の前に、いるからだよ!しかもご丁寧に人型でな!!


「お前が、助けてくれたんだよな」

「……たいしたこと、してない」

「でも、お前が見つけてくれなければ俺はあのまま死んでた
だからありがとう、それと唸って悪かった」


そんな素直にお礼と謝罪言われても、困る。非常に困る。
いや、礼と謝罪は素直に言うべきよ?俺もそれは分かる。
でもね、言われた相手がね、こう見事なストレート白髪だとね、なんかね、うん。殺意が沸くの。
白髪見るとね、俺ね、あの創造神思い出すのよ。あいつ今禿げてんの?どうなの?今すぐ確認したい。

いや、でもこいつ白髪だけどいい奴そうだし。俺に最初威嚇したけど。
ちゃんと俺みたいな見た目幼児に謝ってくれたし。お前って言われたけど。


「おまえじゃない、シオン」

「そうかシオン、俺はアブソルだ」

「アブソル?」


うん、知らない。何それって感じ。
そろそろ現在地把握とかもしたいんだけどなー。
こう知らないポケモンばっか出てくると、地名確認しても無駄っぽい。
今更聞いたってみんなに、は?って顔されるだけだし。


「ああ、俺達アブソルは災害の予兆を感じ取ることが出来るんだ」

「へー」

「そのため、人間に襲われたり災いポケモンと呼ばれたりしている」

「ふーん」

「……俺が怖くないのか?」

「べつに?」


アブソルが何か怪訝な顔して聞いてきた。
え、何?怖がって欲しかったの?ごめん、全然気付かなかった。
てかあんまり興味なかった。そうなんだー、くらいにしか思わなかった。
ん?てことはアブソルは人間に襲われたのか?


「アブソルこそ、シオンがこわいんじゃないの?」

「……は?」

「だって、シオンにんげんだし」


お前を襲った人間だぞー。いや、アブソルが人間に襲われたかは知らないけど。
てかなんなの。またぽかーんしてますけど。そんなに変なこと言いました?俺。
何か口元緩んでますよ、アブソルさん。
え、何?お前笑うの?笑えるの?普通こういう奴ってもっと仏頂面な感じじゃないの?
ファーストコンタクトよりやけに丸くね?


「シオンは変な人間だな」

「どうせポケモンにそだてられたにんげんだよーだ
わらうな、刈るぞ白髪」

「意外に口が悪いな、そして何故そこだけ流暢なんだ」

「れんしゅうした」

「何のために!?」


意外とノリがいいな。わたには負けるが。
何のために?そんなの決まってんだろ。
いつあの白髪が現れても、スムーズに暴言吐くためだよ……!!


「……とりあえず、俺も今日からこの森に置いて貰うことになった」

「ふーん、そうなんだ」

「反応が薄いな……」


だって興味ないもん。
ショック受けるなよ、こんな幼児の反応に。
あのね?男が男の介入喜んだってしょうがないでしょ?
美女だったら諸手を上げて喜んでやるよ。


「それで、ここに置いて貰うついで…というか、その……」

「はっきりしねーな、はやくいえよ」

「うぐっ……俺も、シオンの家族にして欲しい」

「……は?」


何かごにょごにょ言ってるからいらっとして先を促してみれば。
何か、恥ずかしいこと言われた。
え、何?家族?俺の?はい?
何で?


「俺にも、シオンを守らせて欲しい」


今までしっかりと立っていたアブソルが、膝を折って俺と目線を合わせてきた。
ふわりと笑うその顔は、まあ、腹が立つが美形だ。
何でポケモンは人型になるとことごとく美形になるんだ。
おいおい、中身男子高校生に何こっ恥ずかしいこと言ってんだよ。
何この羞恥プレイ。じわじわ顔に集まる熱がうざい。

え、何?もしかして俺、守るとか言われて嬉しいの?いやいや、ないない。


「シオン、」

「あら?アブソル?それにシオン!」

「「あ、」」


同じ目線で見つめ合う俺たちに、ミロが朗らかに笑いかけた。
今日も相変わらず美女ですね。当たり前か。
思わず笑顔で手を振ると、ミロも振り替えしてくれた。ミロ大好き……!


「二人で何のお話?」

「あー、えっとー」

「シオンと、家族になりたいって話を」


俺が何て答えようか考えていれば、アブソルが勝手にそう答えた。
すっくと軽やかに立ち上がったアブソル。おい、何か目つきがさっきと違うぞ。
何その目、まるで、そう恋してるみたいな……あ?恋?


「そうだったの!」

「ああ」

「私もアブソルが家族になれば嬉しいわ」

「……ミロもシオンの家族か?」

「そうよ」


よくよくアブソルを観察してみる。
目はさっき言ったように、恋してるみたいにきらきらしてる。
口角、僅かに上がってる。頬、薄く赤くなってる。全体的な雰囲気、何かピンク。
今までのミロとの会話、何か計算っぽい。

……へー、ほー、ふーん。そういうことかアブソル。
ミロの献身的なお世話とその美貌にコロッといった訳か、ふーん?


「じゃあ、ミロもこれからは俺のかぞぐあっ!?」

「いわせるか、この白髪め」


取りあえずアホなこと言いそうだったアブソルの脛を思い切り蹴りつける。
幼児の身長だと、一番ダメージ与えられるのここしかないんだよな。
もうちょい大きくなれれば奴の息子に一撃なのに……残念だ。


「なっ、シオン……!?」

「どうかしたの?アブソル」

「なんでもないよ、ミロ!いそがしいんでしょ?」

「……そうなの、また夜お話しましょ?シオン」

「うん!まってる!!」


思わず悶絶して蹲るアブソルに心配そうなミロ。
とりあえずミロに俺が出来る最高の笑みを送って、退場させる。
ミロだけじゃなくアブソルも癒されてるみたいだが、お前には笑ってねーよこの野郎。
ミロが立ち去った直後、俺は未だ蹲ってるアブソルの胸ぐら掴んでやった。


「てめーこの野郎、俺の家族になりたいってあれか
ミロといい関係、果ては恋人になりたいからか」

「なっ……いや、それだけじゃない!俺は本当にシオンと、」

「それだけじゃないって、それも関係してんじゃねえかああああ!!
けっ、どうせ白髪は白髪かよ!」

「お前は白髪にどんな恨みがあるんだ!!」

「末代まで禿げの呪いをかけるくらいの恨みだよ!」

「はあ!?」


何か怒りでか知らないけど、やけにスムーズに喋れる。
いや、今はどうでもいい。
こいつを家族と認めてたまるか。こいつを認めたら俺の家計、どうなんのよ。
姉兼母→ミロ、兄→わた、父→アブソル

……絶対許すか、この野郎。ミロは渡さない。


「お前なんて白狸で充分だよ!誰が家族なんて認めるかしろだぬきー!!」

「いきなり……!?いや、せめて音読みではくりにしてくれ!!」

「うるせえ!白髪なんて全員禿げろ!!むしろ俺が今全部刈ってやる!!」

「うわっ、やめ、やめろ……!!」




その後、ぎゃーぎゃー騒ぐ俺達の様子に戻ってきたミロに怒られた。俺って言っちゃダメだって。
白狸のことはいいんだね。はっ、ざまあ。

あ、白狸は必死の訴え、というか長老様に泣き落としにかかったらしく。
長老様に頭を下げられてしまったため、アブソルの名前は“白狸”と書いて“ハクリ”と読むことになった。
漢字表記はNGだって。俺には関係無いけど。


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