7th! | ナノ


03



* * *


「ぐるるる……」

「……」


何これ。何だこれ。何か見つけちゃった。
俺が裸足で森の中爆走してたら、何か見つけちゃった。その上なんかぐるぐる言われてる。
あ、これやばい。俺食われちゃう?食われちゃう系?
えー、やだよ。俺まだ今生で三年しか生きてないんだよ?
まだ俺の人生、恥と爆走とミロへの愛しかないんだけど。


「がうっ!」

「うるさい」

「!?」


あ、やべ。つい喚くわたと同じ対応を取ってしまった。
威嚇してた相手にうるさいとか一喝されて、びっくりしてら。ざまあ。
ていうか何この獣。この辺じゃ見たことないなー。そう言えば場所ごとに住んでるポケモンって違うんだっけ?

……あれ?てかその赤いのってもしかして、


「……ち?」


血。血液。ブラッド。
よく見たらこいつの……腹?腹だな、うん。腹からだくだくと出血していた。

うおわあぁああああああああああああああああ!!何これ怖っ!!
え、てかこいつこのままじゃやばくね?威嚇とかしてるけどやばくね?このまま放置したら死んじゃうくね!?
よしシオン、よーく考えろ!ここでライフカードミスったら俺もやばいぞ!?いろんな意味で!!



 ―シオン――――――――――――
| こうげき ひっさつわざ    |
| ぼうぎょ どうぐ       |
| にげる ▼ゆうめいなあのことば|
 ――――――――――――――――



有名なあの言葉って何!?俺のコマンドどうなってんの!?あ、ライフカードだった。
ってそんなことは今どうでもいいわ!!
あれか!?どうする!?俺!!とでも言えばいいのか!?
ってこれも違うわ!!
じゃああれか、続きはWebで!か!?


「があっ!!」

「あ、あきらめたらそこでしあいしゅうりょうだよ!!」


……盛大に着地点間違えたわ。むしろ着地出来ずにスベったわ。
試合ってなんだよ。血だくだく流してる奴が何の試合に出るんだよ。何?人生の試合?じゃあこいつもう八割負けてんじゃん。
てかこいつポケモンだから試合とか出れないし。
ほら見ろよ、目の前の獣ぽかーんしてんじゃん。さっきから俺のこと威嚇してたのにぽかーんしてんじゃん。

……もういいよ。終わったことは戻らないし。
今ならこいつに近づいても噛み付かれたり頭に着いてる角みたいなので切り裂かれたりしないだろうし。
勝手に応急措置みたいなのしちゃえ。止血擬きでもしないよりましだろ、多分。
さっきのは、あれだ。こいつがいきなり大声上げるからびっくりしちゃった、ってことにしとこ。
ほら、俺今幼女だから多少変なこと言っても流されるよ、多分。


「シオンのふくでしけつしてあげるからうごかないでね」


まあ、まだぽかーんしてるから俺の声なんて届いてないだろうけど。
あ、因みに俺の一人称、みんなの前ではシオンになってます。
前に喋れるようになって普通に自然に俺って言っちゃたらミロとわたに盛大に怒られた。
女の子が俺って言っちゃダメ!だって。わたは別に良いんだけどね、ミロに言われたらね、仕方ないよね。
そう言う訳で外見では一応シオンです。中身では盛大に俺って言ってるけど。誰も気付かないからセーフセーフ。

シャツみたいなのの上から羽織ってた半袖のジャケット的なものを枝に引っかけてびりびり破く。
素手?無理だよ、そんな漫画みたいなの。
細く長く切った服を獣に蒔く。
最初は抵抗されたけど、体力が尽きたのか段々大人しくなった。これはまずい。
てかこの獣、よくみたら白い毛皮してるのね。血で全然分からなかった。


「ちょっとみみふさいでて」

「うー……」

「ふさがないならべつにいいよ、みみつぶれてもしらないし」


もうめんどくさいから適当にそう言い放つ。
そうすれば白い獣はしぶしぶ前足を上げて耳を塞いだ。あ、耳そこにあるんだ。
とりあえずあれだよね、大声出せばあいつら気付いてくれるよね。気付けよ?
そこはポケモンの五感信じるからな、俺。


「わあぁあああああああああたああああああああああああああああああ!!ジグザグううぅううううううううううううううううううううううう!!」

『どうしたのシオン!!』

『『なにがあったシオンー!!』』


来るのはえーよ。
俺が呼んでまだ一秒起ってないんですけど。あれですか、それがポケモンクオリティですか?
原型で文字通り飛んできたわたと原型でジグザグに走りながら特急で突っ込んできたジグとザグ。
お前らどこで俺のこと見てたんですか?ってくらい素早かった。だが今は助かる。


「このポケモン、けがしてる」

「え……うわあぁあああ大丈夫ですか!?」

「「ぎゃー!!ちだらけー!!」」


いつの間に人型になったんだよ。別にいいけど。
お前ら落ち着けよ。うるさいぞ。
見ろよ、白い獣もびっくり通り越してうんざりした表情してんぞ。


「わた、いますぐちょうろうさまんとことんで、たすけよべ」

「わ、分かった!三人共、ここ動かないでね!!」

「いいからはやくいけ」


いつまでも落ち着かないもんだから、ついうっかり命令口調になっちゃった。
まあ本人気にしてないからいいか。
取りあえず抱き合ってきゃーきゃー言ってる双子を黙らせるか。
その後は逃げようとする白い獣を黙らせよう。物理的に。
いや、ちょっと殴るだけだし。今動くと死んじゃうよ?って言う優しいシオンちゃんからの優しい忠告だし。

取りあえず、早く頼りになる大人、来い。


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