「おーい!」
「シオンー」
「「あーそーぼー!」」
どもどもこんちは!シオンっす。
今俺の名前呼んだ仲いい二人組、俺の幼なじみです。
最初に声上げた方が兄貴のジグ、俺の名前呼んだ方が弟のザグ。因みに双子。
……いや、幼なじみって言うのはちょっと語弊がある。あれです。同じ母の乳を吸った仲です。
あれだよ、ぶっちゃけ一話に出てきたマッスグマ夫妻の子どもさんだよ。
「いまいくよー!」
前回の話から早くも三年たちました。
いやあ、こういう時小説って便利だよな!都合の悪いとこは丸々カット出来るし。
あうあう言って地面に転がって泣くしか出来なかった俺ですが、三歳になりました。
聞いてよ!俺やっと二足歩行出来るようになったんだぜ!喋れるんだぜ!みんなと同じもの食ってもいいんだぜ!!
もうあんな赤ちゃんプレイを微笑ましい目で見守られることが無くなったことが最近の俺の一番の幸福です。
「はやくー!」
「わたにいもよんでねー」
「えー……めんど」
「「はーやーくー!!」」
しかし如何せん中身がもう二十歳いってるせいか、身も心も純粋な三歳児の相手はなかなかにしんどい。
一日耐久鬼ごっこした時は死ぬかと思った。もう俺、ポケモンの体力なめてたわ。
ポケモンって言ったってまだ幼児と変わらないからそんなハードでもないだろって思ってたあの日の俺を今すぐ殴り倒したい。
見かけに騙されちゃいけないんだ……!!
まあ遊びに誘われれば喜んで駆けていくけどな!ここ森の中だから何もないし。暇だし。
「わたー、ジグとザグきた」
『えっもう?相変わらず元気だねー』
俺が頭上の木に向かって話しかければ、木の上で日課の毛繕いをしていたわたが驚いたように顔を覗かせた。
あ、わたって言うのはチルットのことな。
俺が一歳過ぎた頃あたりだったか、取りあえずみんなのことをそれぞれ呼んでみたんだ。
ミロとか長老様とかマッスグ母さんとか父さんとかジグとかザグとか、綿毛とか。
みんな喜んでくれたよ。特にミロなんか名前つけて貰ったみたいってはしゃいでた。
俺も嬉しかった。でももう少し良い名前にすれば良かった、ビーナスとか。
なんだけどさー、俺がチルットのこと綿毛って呼んだらチルット泣いたんだよね。
綿毛は最初にお前の姿見た時に思ったことだったのに、チルット泣くんだもん。せめて、綿毛じゃなくて綿雲にしてって。
で、チルットだけ名前変更して綿雲になった。でも綿雲長いし。みんなわたって呼んでる。
「はやく、あいつらうるさい」
「うん、じゃあ行こっかシオン」
因みに俺にポケモンの原型の言葉なんて分かりません。
普通だったらポケモンに育てられたんだし分かると思うんだけどね。ほら、俺中身成人しちゃったし。新しい言語覚えられる程容量が開いてなかった。
この三年間でわたは見事に俺の兄貴になってしまった。
だからか知らないけどジグとザグにもめっちゃ懐かれてる。ただの発作性女性恐怖症なのに。
因みにこの三年間で改善はされなかった。
「あらシオン、遊びに行くの?」
「ひい!?」
「うん」
背後からかけられたミロの声にわたはガタブル震えて俺を盾にしている。
うん、いつも通りだ。
ミロもこの三年間ですっかり慣れたのかわたなんかスルーだ。スルー。
「気を付けてね、シオン」
「ミロも!きをつけてね」
「はーい」
俺が結構真剣に言ってるのに、ミロったら微笑ましそうに俺の頭を撫でている。
くっそ!俺は本気なんだぞ!ミロは美しいから色んな害虫がミロを狙ってるの俺、知ってるんだからな!!
ちょっとは危機感持ってくれよ。いや、ほんと。
「わた、シオンとジグとザグのこと宜しくね」
「ぅはいっ!!」
「わた、なさけねー」
いつ見ても決まらないやつだよな、こいつ。
顔と手先だけはいいんだからもっとしゃきっとしろよ。しっかりしてるのが男の前だけってそれどうなの?
俺みたいな幼児の言葉に泣きそうになるなって。
「シオンー!」
「わたにいー」
「「おーそーいー!!」」
あ、せっかちな双子が喚いてる。
さてさて、今日はいったい何して遊ぶんだろうなー。
あいつらポケモンの癖にどっかから人間の子どもの遊び聞いてきてやろうって言うし。
シオン人間なんだから詳しく説明しろって言われても、俺一応純ポケモン育ちだから説明したら怪しまれるんだよ。説明しちゃうけど。
「いまいくっつったじゃん!」
「いまはとっくにすぎた!」
「わたにいもたもたすんなー」
「「いっぱいあそべないだろー!!」」
まだ朝なんですけど。早朝なんですけど。
分かったから手を掴むな引っ張るな走るなあぁあああああ!!
あ、因みに俺は靴なんてもの履いてません。わあ、野生児。いや野生児だけど。
手先が器用なわたに服は作ってもらったが、靴は作れないって。
しょぼんとしてた。いや、靴は無理だよ諦めろ。むしろ作れたら凄いわ。
そんな訳で三歳の俺はすくすくと野生児ロードを爆走しています。
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