7th! | ナノ


なくのもたいりょくがいるのです



「あー、う、う!」

「え、えと、えと……!」


誰だこいつ。

あ、どうも。×××改めシオンです。
先日長老様の鶴の一声ならぬトロピウスの一声で、森で暮らすことになった赤ん坊です。
あの後知ったんだけど、長老様ってトロピウスって言うポケモンらしいよ。
正直俺にとっちゃ、トロピウス?へー、そうなんだ、くらいにしか思わなかったけど。だってトロピウス知らないし。
俺、ポケモンは金銀クリスタルで止まったしさー。

まあそんな余談はぶっちゃけどうでもいいんだ。今は。
それより誰なの、俺の顔を真上から見下げてるこの子ども。
何か腹立つ程整った可愛い顔してるが、俺には分かる。こいつ野郎だ。
声もとてつもなく綺麗だが、こいつ野郎だ。
何なの、ポケモンってみんな美形なの?ミロしかり長老様しかりマッスグ母さんしかり…。
そういやあの白髪も美形だったな。性格最悪で破綻してたけど。
あ、思い出したら腹立ってきた。禿げろ。


「あ、ぼく、ぼく、じゃなくて、おれ……」


一人称くらい統一してくれよ。
何こんな人畜無害な赤ん坊にビビッてんの?何こいつヘタレ?
その頭の上でピコピコしてる二本の青いアホ毛は何?引っ張ったら何か出る?ピク○ン的な。


「きゃーあ!あいっ」

「あっ、い、いたっ、痛いよ……!離して……っ」


つーわけで引っ張ってみた。が、何も出ない。当たり前か。
いや、ちょっと自動でピコピコ動いて何か怯えるみたいにぷるぷる震えるアホ毛が欲しかったとかそう言う訳でないんだ。ほんとだよ?
でもさあ、何て言うか赤ん坊になってから耐えるってことが出来なくなってきたんだよね。
何て言うの?本能のままに生きるって感じ。
そりゃそうだ。俺、今赤ん坊だし。
と言う訳でだ、悪いとは思うが泣くな、少年。頼むから。
赤ん坊に泣かされるとか、結構情けないから。


「う、うぅ……」

「あう」


取りあえず、しくしくと泣く少年の膝をぺしぺし叩く。頭は届かなかった。
さっき掴めたアホ毛は少年が屈んでたから掴めたんだよねー。さっき少年起きあがっちゃったし。
今両手で顔覆ってるし。


「ぐす……っ、おれ、おれ、チルットって言うんだ……」

「う?」


まさかのここで自己紹介すか。
半泣きで自己紹介すか。いや、原因の半分てか大体俺だけど。
チルット、チルットねえ……。うん、やっぱ聞いたことないわ。
年は大体十歳くらいか。
しかし何でこいつここにいんの?しかもミロがいないのを狙って。
ミロは今食事しに行ったんだよなー。
最初俺を虐めに来たのかと思ったらそうでもないみたいだし。逆に俺に泣かされてるし。


「おれ、赤ちゃんって見たことなくて……かわいい」

「あーう!」


そりゃどうもありがとう。心は高校生だからあんまり嬉しくないがな。
でも赤ちゃんってマッスグ母さんとこにもいるじゃん。しかも双子。


「人間の赤ちゃんって、こんな感じなんだ……
わ、ふくふくしてる……!」

「あうあうあう」


やーめーろー!
お前が人間の赤ん坊に興味津々なのは分かったから、俺のほっぺをつんつんするのはやーめーてー!
野郎にやられてもちっとも嬉しくないからー!!どうせならミロがいいし。


「ね、また君に会いに来てもいいかな…?」

「う!」


お前……!赤ん坊に許可取る程腰が低かったのか……!!
って違うか。
おういいぞ、俺もミロいないと超暇だし。ほら、赤ん坊って基本寝るか食うか泣くか転がってるかだしさ。
ついでに何か暇つぶしの物持ってきてくれるとすごく俺は喜ぶ。
むしろ俺の中でのお前の株がだだ上がりになるよ!


「ありがとう……!次、次来る時はいい物持ってくるね!!」


通じた……だと!?
何なのこの子、天才か?


「じゃあ、ばいばい」

「あーう」


うん、またな。
……思ったけど、ミロしかりチルットしかりよくもまあ普通に赤ん坊放置していくよな。
普通の赤ん坊だったら大泣きですよ?俺だから放置しても大丈夫なんですよ?そこんとこ分かってる?
せめてミロが帰ってくるまでここにいるとかしないの?
そんな俺の心の嘆きはチルットには届かなかった。さっきは通じたのに。
チルット少年はパタパタと可愛らしく駆けていった。
……男の癖に!!


「うー!あー、あ!!」

「うふふ、シオンったらどうしたのー?今日はご機嫌なのね」


俺がじたばたと手足をばたつかせていれば、俺の親のミロが帰ってきた。おかえり!
今日も相変わらずお美しいですね。口元に手を当てて優雅に笑う姿が超似合ってます。
ミロの登場に俺が更に手足をばたつかせれば、ミロは優しく笑って俺を抱き上げてくれた。
……最近ミロのお胸様の中にも慣れてきたんだぜ……?嬉しいような虚しいような微妙な気分。


「シオンは今何ヶ月なのかしらね」

「う?」

「寝返りがうてると大体五ヶ月くらいって長老様がおっしゃっていたのよ」


へーそうなんだ。今度試してみるね、ミロ。
てか長老様すごくね?何でポケモンなのに人間の赤ん坊の成長とか知ってんの?
え、育児書でも読んだ?


「シオンがおしゃべりしてくれる日が楽しみ」

「あい!」


んなことそんな美しい顔で言われたら頑張るしかないよなあぁあああああ!!
そんな訳で俺は今日から寝返りの練習と喋る練習を始めるのだった。
……人間が喋るのようになるのと二足歩行出来るようになるのってどっちが先だっけ?


prev/next
top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -