嘲笑 | ナノ

傲り、笑う


さて、アナタはいつになったら気が付くのでショウ。

結局ゲーチスはあの子どもに見事に倒されたらしいデスヨ。
ああ、らしいって言うのは直接見ていないからデス。
カレが飽きて早々に退場してしまいましたカラ。
じゃあ何で知ってるかって言うと、今ゲーチスが連行されている現場にいるからデスヨ。
チャンピオンとメガネをかけた子どもに連れられたゲーチスが警察に引き渡されル。
警察官の制服を奪ったカレはそれを着込み、何食わぬ顔で二人からゲーチスを受け取っタ。
車に乗せて、走り去ル。
何て呆気ナイ。
途中で同乗した警察官をワタシの念力でちょいちょいといじれば仕事はオシマイ。
適当なところで車を止め、ドアを開ければゲーチスは不思議そうな顔をシタ。


「あれ、分からない?おれだよ、ゲーチス」


帽子の鍔をぐいと持ち上げ、化粧を落としたカレにゲーチスは目を見開いタ。
カラコンは外していたため、カレのウィスタリア色の瞳がゲーチスを捕らえル。
カレをカレだと認識したゲーチスは、分かりやすく破願シタ。
醜悪に唇を釣り上げ、耳障りな高笑いを上げル。


「ふ、はは!はははは!流石ですよシン!まさか警察を出し抜くとは!!」

「そう?ありがとう」


つい先ほどまでカレに警戒心しか抱いてなかった男が、こうも希望を仄めかすだけで態度が一変するトハ。
それほど長年の夢を絶たれたことが精神にきていたんでショウカ。
わざわざワタシ達がアナタを助ける理由がないと、アナタは分かっているでショウニ。


「アナタが助けてくれておかげで思い出しましたよ!もう一度、そう今回がダメだったのならばもう一度一から策を練ればいいのだと!!」

「そう、よかったね。がんばって」

「もちろんアナタも協力するでしょう!?シン!!」


カレがゲーチスに協力することを、ゲーチスは一辺も疑っていなイ。
それも仕方ないでショウ。
だって、こんなにも手の込んだ、しかも警察に楯突くようにゲーチスを救い出したのデスカラ。
そんなゲーチスを、カレはにこやかに突き落とス。


「はは、冗談きついよゲーチス」

「なっ」


にっこりといつもの笑みを浮かべ、告げた言葉は否定のモノ。
予想もしなかったカレの答えに、良く回るゲーチスの口が戦慄いタ。


「世界征服?くだらない……実にくだらないね
おれはねゲーチス、きみが悪人にしては珍しく押さえきれない悪意を隠しているからね
いったいその根本には何があるんだろうって珍しく興味を持っていたんだよ?
それなのにきみの望みは、願いは、目標は、理想は、実に有り触れたくだらないものだった
……ねえ、きみにおれのこの落胆が分かるかい?」


車の後部座席の真ん中に座るゲーチスへ顔を近づけ、そのきれいな顔をうっそりと歪めル。
浮かべる表情は笑みそのものだが、どこか薄ら暗さを感じるそれにゲーチスは表情を引きつらせタ。
あ、右半分がうごいてイマセン。不自由なのでショウカ。


「まあ目標は人それぞれだからね?そこまでは大目に見てあげる
けどその後に手追いの獲物にやられちゃうのはどうなんだろうね?
きみには大いに失望したよゲーチス、時間の無駄だったみたいだ」


仄暗いウィスタリア色の瞳を顰め、口元に笑みを浮かべ、カレは哀れな男にトドメを刺しタ。
何かすぐに反撃でもすればまだカレの機嫌が治ったかもしれないのに、ゲーチスは怒りか恐怖かよく分からないが口を閉じたり開いたりするダケ。
そんなゲーチスの様子にカレは深いため息をつきマシタ。


「ナキ」


そして、カレが傍にいたワタシの名前を呼んダ。
それが意味するモノを、ワタシもゲーチスもすぐに理解しマシタ。
逃げるゲーチスを捕らえ、腕を顔の位置まで持ち上げル。
これからされることに怯える獲物を嬲る快感。
ああ、いつ感じても甘美。




それからしばらくして、警察に届けられるはずのゲーチスが森の中、錯乱した警察官数名と共に発見されることになりマスガ。
このことは今のところワタシ達しか知りマセン。

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