澄み渡る宝石のいろどり
あのこがとてもうれしそうに笑っていた。なんだろう。なんだろう。どうしたんだろう。あのこが笑うとぼくもうれしい。だからあのこを笑顔にしたオトウサンはすき。あのこのそでをちょん、と引くと、あのこはきらきらした笑顔のままぼくをふりかえった。
あのこのてのひらには、さっきオトウサンがくれた石がひとつ、おぎょうぎよく座っている。石は、あおく透きとおっていて、まんなかにはしろいあわみたいな模様がいくつも浮かんでいる。石はまるで、ちいさな水の中みたいだ。ちかちかと反射するあおいひかり。なんだかそれを見ていると、むずむずする、というかうずうずする、というか。今までかんじたことのない感覚がしてきもちわるい。いやだ。
「これはね、みずのいしっていうんだよ!」
あのこはにこにこ笑う。ぼくはそっと、あのこのそでから手をはなした。ほら、よくみてごらんって、あのこはぼくの目の前に石をかざした。きらり、とあおいひかりがささやく。さわってごらんって。
「お父さんがね、偶然見つけてくれたんだ!これがあれば進化できるよ!」
しんか。進化。ぼくが、進化する。ぼくが、この石にさわってしまうと進化するのは×××××だ。いやだ。いやだよ。ねえ、気づいて。
アメはきらいだ。さむいからいや。みずもきらい。きらいをちかづけるあのこはいやだ。ぼくは、石をちかづけるあのこのてのひらをたたいた。いやだ、ちかづけるな、それはいやだ。いやだ。やだよ。
これが、ぼくがふあんになったおはなし。
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