海月の腹底 | ナノ

燦々と照りつける眼差し

あのこと出会ってから、もう随分たった。ぼくを目にしたその日から、あのこはずっとぼくを慕ってくれている。大好きを全身で表すように、抱きついてきたり、頬をすり寄せたり、無防備な笑顔を向けてくれたり。そんな姿が可愛らしくて、愛おしくて、ついついぼくもあのこを甘やかしてしまう。

昨日は泥だらけの足で家の中を走り回っていたから、掃除が大変だった。しょんぼりした顔でうろうろとぼくの周りを歩いている姿を見て、頭を撫でてしまったけれど。


「今日は何して遊ぼうか」


ぼくがあのこにそう声をかければ、今までひとりで遊んでいたあのこは、飛び跳ねるように駆けてきた。

ああ、そんなに走ったら転んでしまうよ。はらはらしながら両手を差し出せば、あのこは案の定体勢を崩しかけていた。慌てて両手であのこを抱きしめるように支える。見下ろしたあのこは、まるで何が起きているか分からないかのようにきょとんとしている。


「そんなに走ったら危ないよ。ぼくは逃げないから、ゆっくりおいで」


そう、あのこの頭を撫でて言い聞かせると、あのこはようやく自分の状況を理解ようだった。頬を薔薇色に染めて、はにかむように笑みを浮かべる。つたない言葉で、一生懸命にありがとうと笑った。

これが、ぼくとあのこの幸せなおはなし。

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