おくびょうなぼくの決意
朝からアメがふりつづけていた。空からまっすぐ落ちてくるアメはぱちぱちと水面を叩いて消えていく。少しくぐもったその音が、あの時みたいですこしこわくなる。アメはだんだん強くなって、勢いを増すばかり。
ぱちぱち。ぱちぱち。
ざあざあ。ざあざあ。
こつこつ。こつこつ。
湖の水が増えていく。あふれる。ぼくのからだがあっちへこっちへ揺らぐ。揺らぐ。形を保てないぼくは、ゆらゆらゆらぐ水面にぐらぐらとかき回されるだけ。ふとしたときにばらばらになりそうで、必死にもとの形を思い出す。それでもぼくの手は透けて、溶けて、ゆらいで、消えるだけ。ああ、ぼくはこのままアメといっしょにどこかに流れていくのだろうか。
どぼん。
ゆらぐぼくの目の前に、何かが落ちてきた。ショウテンが結べないほど近くに落ちてきたそれは、ひどく見覚えがあった。あのこだった。もがくように両手足をばたつかせて、必死に水の上に顔を出す。それでもだんだん力つきて、あのこの顔がこっちを向いた。手足がだらりと伸びている。
何をしてるの。早く息をしなくっちゃ。あのこはぼくとちがって、水の中では息ができないのだから。なにしてるの。はやく、はやく。ぼんやりとしたひかりが灯るひとみが、ぼくを見てうっすらとわらった。
「、まって!」
どうしてぼくと目が合ったの。どうしてわらったの。おこってないの。ねえ、どうして、しずんでいくの。あのこは、どうして溶けないの。溶けてないのに、どうして口から泡が出なくなっていくの。
どうして、ぼくの手はあのこに届かないの。あのこを助けられないの。
ぼくは、ぼくを必死にかき集めて、腕を伸ばして、そして、
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