03
「あっはは!そんでお風呂で倒れたの?馬鹿だねー」
「ちょ、心配の言葉とかなし?」
昼休み。四時間分の授業を終えて、お母さんの作ってくれたお弁当を食べて。高校に入学してから出来た友達とくだらない雑談をする。さばさばしていて、からりと明るい我が友人にわたしの昨日の珍事を話せば、やはり笑い飛ばしてきた。
けらけらと笑い声をあげて、彼女は自分が買ってきたお菓子に手を伸ばしている。スティック状のスナック菓子をぱりぱりと咀嚼している彼女の足は、羨ましいほどすらりと細い。見事に組まれた、白い足が眩しい。
「未子ってどっか抜けてるからね。まあ、ありえるかと」
「ないって!はじめてだよあんなことになったの!」
友人に箱ごと差し出されたお菓子に遠慮なく手を伸ばす。そういえば初めて見る種類かもしれない。コンビニで買ってきたと言っていたから新作のお菓子かも。限定ものには弱いもんな。わたしも彼女も。
「そう?よく授業中とかぼーっとしてるし。かと思えばノートにすごい勢いで何か書き込んでるし」
「え、そう……?」
しまった、バレてた。この頃話も終わりに近づいてたから、授業中も先生に気づかれないように創作してたんだよなあ。いろんなノートのはしっこに文章書き込んでるから迂闊に貸せなくなってしまった。
友達に創作のことは話せていない。彼女、ポケモンはピカチュウとか、CMにでてくる有名なのしか知らないし。そもそもゲームもあまりしない子だ。漫画は読むけど、わたしの好みとはあまりあわないジャンルだし。平たくいうと、リア友ではあるがオタ友ではないのだ。
「気をつけなよー。こないだも結構夜更かししたって言ってたし。寝不足になると貧血なりやすいらしいしさ」
「……うん気をつける。ありがとう」
「わー、未子がいつもより素直ー。どうした?何かあった?」
「通常通りですー」
それでも、さり気なく気遣ってくれる優しい子だ。あまり積極的に周りに話しかけにいかないわたしにも気さくに話しかけてくれる。主に創作とか、言えないこともたくさんあるけど、一番頼りになる友人なんだよなあ。
「次の授業なんだっけ」
「数学ー」
時間割を見ればすぐ分かるような、他愛のない話でも煩わしく感じないのは、わたしが彼女が好きだからだろう。これが別の人なら多少面倒くさく思うかもしれない。
それにしても次は数学か……。午後の一時間目の教科には相応しくないよなあ。どの授業でもそう思うけど。昼休みの終わりを告げるチャイムが遠慮なく流されている。先生が来ない内に席に戻って教科書を出せば、がらりと前のドアが開いた。
「きりーつ、れーい」
日直のやる気のない挨拶と共に、つまらない授業がはじまる。黒板に書き連ねられる白、たまに赤や黄の文字を追いながら、そっとシャーペンを唇に押し当てる。
今度の話はポケモンの擬人化がまだ世の中に広がってない設定。トリップした夢主が悪役に追われるポケモンを助けるところからはじまる。まあ、王道といえば王道な気がするなあ。そこから仲間を増やして、旅に出て、今度は前の話より、複雑にしたい。悪役の名前は、エデン。ポケモンを捕まえて無理矢理擬人化させたり、擬人化するポケモンを実験したりする、オリジナルの悪役だ。まだ幹部とか決めないけど……。そうそうエデンは少しだけ前の話にも出てて、リンクしてる。この話でいろいろ解き明かしていく、ように書いていきたいな。
先生の話を聞き流しながら、思いついたことをノートの端に書き込んでいく。あっという間に黒くなっていくノートのふちに、ふと思い出した。
そう言えば、まだ最後の話、更新してなかったなあ。
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