00
夢を見るの。
物語が終わりに近づくにつれて。
はじめに見たのは、混沌のうねりだけだった。
ぐるぐる、ぐるぐる。
まるで彷徨うように、そのうねりはあっちへこっちへばらばらに動いている。何かを探すように、何かを求めるように。
次に見たのは、まるで生きているかのように蠢くうねり。
ぐるぐる、ぐるぐる。
赤、青、緑、黄……。極彩色豊かな、目が眩む程のたくさんの色たち。それらが混ざりあって、やがてうねりは深い深い紫紺へと変貌していく。そのうねりは、やがて惹かれるようにひとつに凝縮して、またぐるぐると何かが形作られていく。わたしはそれを、いつも俯瞰して見ているのだ。
そして、昨日見たのは、
ぐるぐる、ぐるぐる。
はじめは朧げな輪郭。徐々にそれは美しい肢体を晒し、細い指先が長く美しい髪を掻き上げる。現れたかんばせは造形美溢れる、美しい芸術品のよう。
そうして現れたそのヒトは、混沌色の、深い深い紫紺の瞳をゆるりと細め、笑うのだ。
ようこそ、わたし。
× next