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わいが傷の処置を終えてあの無表情なやつんとこに戻ってみれば、なんだかさっきまで雰囲気がかわっとった。
上手く言えへんけど、さっきよりも殺伐というかぴりぴりというか。
戻ってきた原型のわいを抱え上げた嬢ちゃんは、ジョーイさんに一度深くお辞儀をすると何かに追われるように足早にポケモンセンターを飛び出した。
わいを抱えたままヨシノシティの外れまでくると、水辺にわいをそっと下ろした。
潮の匂いがするということは、ここは海か。
突然の行動すぎて意味がわからん。
じっと嬢ちゃんを見上げれば、彼女は静かに立ち上がってわいを見下ろした。
その目が、どこか危うい気がして不覚にも背筋に寒気が走った。
「ここまでありがとうミニリュウ」
『は?』
「ここまでで十分だよ、本当に助かった」
『はあ!?』
一方的にそれだけ言うと、彼女はわいに擬人化する暇も与えず走り去って行った。
その後を世羅も着いて駆けていく。
トゲピーの姿がないのはボールにしまったからか。
申し訳なさそうに幾度かこちらを振り向いていた世羅も、彼女の姿が遠くなると慌てて速度をあげた。
ちゅーか、足速っ。
「……わっけ分からん」
水辺からあがって擬人化して、彼女達の去った方向を見つめる。
あっちの方向はワカバタウンやからまっすぐ自分んちに帰ったんやろか。
それならええけど、あないに焦っとる理由はなんや?
「……様子が変わったんはわいがいない時やから……センター内でか」
自分でもこないに気になる理由はさっぱり分からんが、しゃあないやないか。
気になってしもたんや。気に入ってしもたんや。
あの様子じゃあ、ただ家に帰ったってだけでもなさそうやしな。
ちょっとこの辺であの、歪な二人組を待たせてもらおか。
次は言い逃げなんてさせへん。
最後まで付き合わせてもらうで。
わいがそないなこと考えながらポケモンセンターん中に入れば、そこは浮ついた雰囲気で満ちていた。
近くにいたトレーナーに聞いてみれば、一冊の新聞を手渡される。
その新聞の見出しに目を落として記事を読み進めて、わいは一度首を捻った。
「……ロケット団復活?」
三年前、カントー地方を騒がせたあの集団のことやろか。
少々信憑性に欠ける文章を、わいは暇つぶし程度に流し読みしていた。
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