花曇りの空 | ナノ

04


研究室内へと戻したポケモン達へフーズを与えてから部屋に入った部屋では、既に研究員達全員が昼食を取っていた。
くるりと一度視線を部屋内に走らせれば、隅の方のテーブルにてこちらを見ているカナデがいた。
こちらに気が付いたカナデの方へ駆け寄る。


「遅い」

「ごめん、ポケモン達にご飯あげてたんだ」

「……お前も早く座れ」


近くに置いてあった椅子に腰掛けながら言えば、カナデは軽くため息を吐いた。
座ったミナトの後ろに立っていた世羅に催促するように声をかければ、世羅は少し遠慮がちにミナトの隣に腰を下ろした。


「今日はサンドイッチとか、片手で摘める物にしたって母さん言ってたよ
仕事溜め込んでるみたいだからって」

「……飯の間も仕事する気はねえよ」


バスケットを開ければ、三人で食べきれるかどうか不安になる量の食べ物が詰め込まれていた。
全て手作りらしく、まだ温かい。


「だがもう少しで旅に出るトレーナーがいると聞いたぞ」

「初心者用ポケモンの調整、大変じゃないの?」

「今のところ問題ないから平気だろ」


それぞれ好みのものを摘みながら会話に花を咲かせる。
世羅が三人分、茶を注いだ。


「あ、ミナトちゃん!世羅君!」


そんな中、ぱたぱたとスリッパの音を鳴らしてウツギが部屋へ入ってきた。
どうやらウツギも休憩に入ったようだ。
ウツギはミナトと世羅の姿を確認すると、笑顔で近づいてきた。


「ウツギ博士」

「二人ともありがとう
ポケモン達を部屋へ入れてくれたんだよね?」

「これくらい、気にしないでください」

「いやいや、いつも助かってるよ
ありがとうね」


にこにこと笑みを浮かべるウツギに、ミナトは少し居心地が悪そうにそっと目を逸らした。
そんなミナトの隣で、世羅がバスケットを差し出す。
ウツギがきょとんと目を瞬かせた。


「それよりこれどうぞ
昼ご飯、まだなんですよね」

「え!?いいのかい?」

「はい、三人では食べきれないので」


断る理由もないウツギは、近くにあったおにぎりを手に取りカナデの隣へ腰掛けた。
一口頬張り、美味しいと声を上げる。
カナデはそんなミナトと世羅の様子をじっと見ていた。


「そういえば博士」

「なんだい?ミナトちゃん」

「さっきポケモン達にフーズをあげてたんですけど、木の実が残り少なくなってました」

「えっ、本当かい!?
困ったなあ……今誰も手が空いていないんだよね……」


恐らく先ほど話にも上がった初心者用ポケモンの事だろう。
それでなくてもこの研究所は研究員の数に比べ、ポケモンの数が多い。
それもウツギが怪我をしたポケモンやトレーナーに捨てられてしまったポケモン達を引き取っているからなのだが。
皆ウツギの人柄を知っているからか強くは言えず、年々ポケモンの数を増えている。

そんなウツギの様子に、ミナトと世羅は一度目を合わせた。


「博士、ボク達で良ければ取ってきますけど…」

「えっ、いいのかい!?」

「他にやることもないですし」


同意するように頷いた世羅に、ウツギは本当に嬉しそうに微笑んだ。
少し居心地が悪くなるが、ウツギはすぐに「ちょっと待っててね」と席を立った。
自分のデスクに向かい、メモ用紙にペンを走らせるとそのメモを持ってミナトの元へ戻ってきた。


「ここに書かれた木の実を持ってくればいいんですね?」

「うん、頼んだよミナトちゃん」

「……いいえ」


ウツギからメモを受け取り、ミナトは世羅と共に研究所を後にした。
ミナトと世羅の姿がドアの向こうに消えると同時、にこにこと微笑んでいたウツギの表情が暗くなった。


「……やっぱりミナトちゃんはまだ……」

「あんたが気にする事じゃないだろ?ウツギ」

「気にするよ……あのままじゃ、世羅君も可哀想だ」


そっと目を伏せたウツギを横目に、カナデは小さくため息を吐いた。


「何かきっかけでもあればいいんだけど……」

「きっかけ、ねえ……」


そのときちょうど、ウツギのパソコンに一通のメールが届いた。


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