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 分かりきったことだが敢えて言う。





 ――…可愛い。





「これは?」

「ああ、ソレは耳に、こう――
「わっ――…え、すごい、!」

「…」



 正月早々、馬鹿でかい門松をぶっ倒しながら格闘するテッサイさんとジン太を横目にお邪魔した浦原商店


 ――で、


 畳の上に広がる物の中から、物珍しげにヘッドホンをつまみ上げた?


 ――と、


 それを受け取って、かいがいしく使い方を教えてやる浦原さん。





 ちなみに無造作に散らばったそれらは全部俺の私物。

 こんな抜き打ちの持ち物検査があるとは思ってなかった俺の鞄の中身は、ものすごく適当だった。
 何の面白味もないそれを、目をまん丸にして眺める?は可愛いけど。





「すごいすごい、これ歌ってるの一護?」

「…違げェよ、どっちかっつったら修兵っぽい人」





 でも?が聴いてるのは多分、この前啓吾に無理矢理借りさせられた、ギター片手にやたら長くて不可解な曲ばかりを歌ってるヤツだったから、そこは微妙に否定しておいた。
 そして途端に興味が失せたようにヘッドホンを外した?。――ドンマイ、修兵。



「あ、駄目っスよ?サン」
「…え?」
「コードが髪に絡まってます――じっとして」



 つーか恋次に「現世行くなら?と浦原さんがどんな感じか見張っとけ」とか言われてついて来たけど、一体何だっつーんだよ。



 確かに今日は突然浦原さんに呼び出された。
 でもそれは、雨の着付けを手伝って欲しいから?呼べって言われただけだし、そもそも?と浦原さんが会うのはこれでまだ二度目だし、さっきから見てるけど二人とも特に、…――ん?



「こういうの、欲しいですか?」



 熱心にプレーヤーをいじる?にそう尋ねる浦原さんの声が、少し、硬いような。



「うーん…でも、現世のって高そう」
「お作りしますよ」

「作れるんですか?」
「ハイ」



 やっぱりだ。

 しかも手元に夢中な?を見つめる浦原さんの視線はまったく揺るがない。
 それどころかまるでこっちを向いてほしいと言わんばかりの切なそうな目をしてるものだから、見てはいけないものを見てしまったような気がして、ものすごく居たたまれない。仕方なく携帯をいじるフリをして顔を背ければ、浦原さんが?に近付いたのか、畳がこすれる音がした。



「…?サン」
「はい、」



 ?を呼ぶ声は、さっきより少しは和らいでいる。代わりに要らない甘さが混じってるような気もするけど。
 携帯をいじる手はそのままにチラリとそっちを見たら、浦原さんがさらに膝を寄せ、?を覗き込むように首を傾けたところだった。


「…」
「あの…?」

「イヤ、大したことではないんです」
「はい」



「甘いもの、お好きですか」

「…好きですけど」



 何に驚いたかって、そのときの浦原さんの声がプロポーズかよってくらい緊張してたことだ。
 あまりにも意外かつモロバレすぎて思わず振り返ってしまった俺すら目に入ってないのか、真剣な顔した浦原さんは、畳の上にあった?の指先にそっと触れて、触れて、…――



「喜助さん、」

「…差し上げます」



 その手に何か握らせた。

 俺の目が馬鹿になってなければそれは多分、赤い包み紙にくるまれた、ハート形のチョコレート。


「これ…って現世の」
「お口に合えば良いんスけど」

「…浦原さーん、バレンタインなら来月だぞー」


 目をキラキラさせて喜ぶ?には悪いが甘すぎる展開に思わず言ってしまった俺。その途端に浦原さんが底冷えのするような視線を向けてきた。



「黒崎サン」
「…ンだよ」
「邪魔しないでもらえますか」
「スイマセンね、あーでも浦原さんでもこういうコトあるんだなー」
「…正月早々紅姫の餌食になろうってことっスね、分かりました」
「喜助さんの斬魄刀?…見たい」
「?、頼むから話をややこしくするな」
「何時でもお見せしますよ」

「…」








いっそ油断してみせようか






「おう一護!どうだったよ」「どうだったも何も、アレはマズい」

「マジかよ!」
「悪意を感じるレベルでベタ惚れだったぞ」

「…ハァ」
「…敵は多いな」









ってだけのおまけ話でした(笑)
恋する乙女並みに?ちゃんに一目惚れな喜助さんを登場させたかったんです海崎。
でも大人で一途な優しい喜助さん、ちょっとハマったのでまた書くかもしれません。

「新たな刺客」喜助さんに票をくださったお嬢様、ありがとうございました(^0^)/










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