年越しのあまりの寂しさにはこの際目をつぶってやる。 ?と年越しを一緒に過ごす権利を手に入れたはずが、何がどうなってこうなったのか、結局くりすますの時と同じ男どもと蕎麦を食べた。 だが俺は、来年も云々とかあけまして云々とか、そういうありきたりな挨拶はまだ誰にも、一言も口にしていない。ついでに言えば、年越しのために用意しておいた?の好きそうな酒も、まだ開けていない。アイツらは安いので十分だ。 年をまたいだ瞬間でさえ、目の前で盛り上がる仲間よりも?のことを考えてたくらいで。 その他諸々、すべてに目をつぶって俺はただ、?に会えるその瞬間を待っていたわけだ。 女々しいと笑えばいい。俺は全部、?にあげたい。 「…お、来た」 「?ー!」 そして今、その瞬間がようやく訪れようとしてるんだ――邪魔すんなよ。 「?、」 「ちょ…お酒くさい」 憎まれ口を叩く可愛い唇を掠めるように奪って、そのまま抱き上げる。 ――ああやっと、抱き締められた。 ![]() 男ばかりの十一番隊舎。 廊下にまで響いてくるたくさんの酔っ払った声を振り払うように、俺は?と二人っきりになれる場所を探した。 「どこ行くの」 「どこだろうな」 「下ろして」 「絶対ェやだ」 「…」 「…」 「修、」 「…」 「怒ってる…?」 俺としてはそんなつもり微塵もなくて、でもやっと?を独占できる興奮かなんかで、もしかしたら少し乱暴になってたかもしれない。 とにかく?は急に静かになって、抱っこしてんのにも文句言わなくなって、そういえばコイツ、 「ごめんなさ、ッ…」 こういうの駄目なんだった。 あっという間に泣き出してしまった?を慌てて下ろしてやる。 廊下だけどそんなのもうどうでもいい、高そうな着物の袖でごしごし涙を拭おうとする?を、膝の上に乗っけて抱き締めた。 「ごめん――ごめんな、俺が悪かった…?、泣かなくて良いから」 「ッ…う、ん」 ドSだしすぐ手は出るし、そういうのが全部、独りを嫌う?の心の裏返しだって、 「怒ってねぇから。な」 「…うん」 俺は知ってるのに。 あー…情けねぇ。 ?を抱いたまま、ぐしゃぐしゃになってしまった着物の裾をいじっていた俺の手に、?の手が重なる。 そのまま握られて、涙で濡れた感触が伝わる。 「ごめんな」 「大丈夫、ごめん、もう平気」 「悪ィ、本当に」 「それ以上謝ったら手つねってやるから」 ?らしくない少しおどけた声音に思わず笑えば、ようやく気を緩めてくれたのか、膝の上の重みが少しだけ増した。 片手を握ったまま、空いたほうで頬を包んでやれば、嬉しそうに細めた瞳から涙がぽろりと落ちる。 ――やっぱり、?が好きだ。 「?、今年も宜しくな」 「うん」 「今年は…そうだなーとりあえず」 「…何よ」 「俺以外の男と二人になんの禁止」 「は、?」 「守れなかったら、」 「…守れなかったら?」 「浮気してやる」 「無理でしょ」 ▼ あけましておめでとうございます。 サイトともども今年もどうぞよろしくお願い致します! そしてミスターは、やっぱり檜佐木でした。よかったね?ちゃん(´∀`) 2011年元旦 海崎愛 |