冬の博物館に入った。中は吹雪で、あらゆる展示物が白く固まっていた。絶滅した鳥の剥製、壊れた腕時計、美しい装飾のカレイドスコープ。深海魚だけが氷の中でも生きていた。隅に吹き溜まった雪の中に、あなたが蹲っていた。あなたはたくさんのコートに埋もれていたが、何も着ていなかった。顔を上げたあなたと目が合った。凍った湖のような瞳だった。



「俺がどうして周りに馴染めないのか分かった。俺は人間じゃなかったんだ」と不良の彼は言った。冗談でしょう、と私は鼻で笑った。でも本当だった、彼は行ってしまった。私は、彼が周囲との齟齬を感じてはぐれ者になっていくことに早く気付いていれば、と悔やんだ。



「あのおじいさんはねえ、昔、ほんものの彗星のひかりを見たせいで、盲いてしまったんだよ。」
なるほど、光に焼けた髪は真白。彼が言うには、偽物の彗星は蛞蝓のようで、本物の彗星は鯱のように真っ直ぐで速い、らしい。




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