色とりどりに塗られたコースターの最前に二人並んで座ると、係員もいないのにひとりでに動き出したので驚いた。そもそも遊園地が息を吹き返し、誰もいない場所に謎の少女が現れたということだけでも、信じがたいことなのだけれど。
 コースターは徐々に速度を上げていく。天辺で一瞬止まった直後、反動で一気に滑り落ちる。上がったり下がったり曲がったりするたびに、リリイは両手を上げて喜びの声を上げたが、僕はそれどころじゃなかった。車体がきしきしと鳴って今にも解体しそうだし、僕自身の体も振り回されるコースターにぶつけたり押しつけられたりして、ばらばらになりそうだった。
 はらはらするけど、でも、不思議と嫌な感じはしない。
 こんなふうに、乱暴に、優しく扱われたことがあった気がする。母さんの手だろうか。親戚のおばさんが苦笑しながら話してくれたことがある。母親は僕を高い高いしてあやすとき、勢いが良すぎてぞんざいなくらいだったと。母親にそのことを確かめようにも、もういないから真相は分からないままだ。
「ねえ、レールが途中から無くなってる!」
 コースターのレールが途中から切れていることに気付き、焦ってリリイに呼びかけたが、リリイは「大丈夫、大丈夫」とのんきに言って、相変わらずスピードを楽しんでいる。コースターは止まることなくレールの先へ突っ込んだ。





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