「皆さん急いで!あと二分で次の試験が始まっちゃいます!」
ナマエと、ドラコ、(ドラコに背負われた)フィオレ、ハリー、ロンは広間に向かって全力で走っていた。
「まったく、何でもっと早く起こさないんだ!!」
「君らが幸せそうにプープー寝てたからだ!」
「あいっあいっあいっあいっ」
「(フィオレ、舌噛まないかな……)」
試験開始一分前、なんとか広間に滑り込むことができたナマエ達をダンブルドアはにこやかに迎えた。
広間には長いテーブルがいつも通り設置され、その上にはキャンバスとクレヨン、色鉛筆やマーカーペンなどが用意されている。
「ナマエ、こっち」
ハーマイオニーに手招きされて彼女の隣に腰を下ろす。
彼女の向かいにはマッドが子供を抱いて座っており、ドラコもその隣に腰かけた。
「中々来ないから試験受けないのかと思ったわ」
「ふふ、ごめんなさい」
「…どこで油売ってたんだ」
「……まあ、そのへんだ」
ダンブルドアが教台に立ち、手をならして注目を集める。
「さて、全員揃ったところで第二試験の発表じゃ」
試験は全部で三つ。
テーブルの上のものを見て次の試験内容がなんとなく分かってしまったのはきっと私だけじゃないはず。ナマエは隣のハーマイオニーと目配せをして微笑んだ。
「ホッホ、第二試験は子供たちの芸術分野じゃ。きみたちのママの似顔絵を、テーブルの上にある画材を好きに使って描いてほしい。なお、男子諸君は絵を描くこと以外のサポートはしてよいこととする」
とたんにどよめきだす広間。
すかさず、ドラコが立ち上がった。
「お言葉ですが!ダンブルドア校長」
「なんじゃね?ミスター・マルフォイ」
この間、ドラコの腕の中にいたフィオレは身をよじり、ずるずるとテーブルの上に足をつけていた。
ドラコは勢いで立ち上がったことを少し後悔し始めたようにちらりとナマエの方を見る。
「……ここにあるものと言われましたが、ここにあるのは……僕の見間違いでなければ、これは…」
ダンブルドアはドラコの言わんとしていることを理解しているらしく、ひとつ頷いてテーブルの上のクレヨンを手に取った。
「そう、これはマグル達の用いる画材じゃ」
ナマエはそこでようやくドラコの言いたいことを理解して顔をあげた。
ドラコはすでに着席しており、居心地悪そうに目線をフィオレのつむじに落とした。
「色はひとつにつき一色しか出なければ、舐めても甘くはないし、こすれば滲んで他の色と混ざるばかりか、なんと、触るとこのように手にもついてしまう」
ふたたびどよめく広間。
ナマエやハーマイオニーなど、マグルの世界で生活した経験のある数人は「何がおかしいんだろう」と首をかしげるが、魔法界では全てが異例だった。
「皆、手元に羊皮紙があるはずじゃ。そこに描かれた指示の通りの手順で進めることが条件となる。なお、審査は皆に配られたキャンバス自身がしてくれるでの」
ダンブルドアの言葉に、任せてくれと言わんばかりにキャンバスがブルブル震える。
「女子生徒諸君は完成するまで絵を見ることは禁止じゃ。道具の指定もしてはならん。よいかね?」
ハーマイオニーはがっかりと肩を落とした。(きっとあれこれ指示を出すつもりだったのだろう)
「さあ、制限時間は一時間。
それでは、開始じゃ!」
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