「赤ん坊に試験とは、これもまた粋な計らいですな。校長」
「ほっほ、そう不機嫌になることもなかろうて、セブルス」


試験前夜、試験会場となる予定の広間でダンブルドア達は話し合いを行っていた。
もとよりこの企画自体に乗り気ではなかったセブルスが、グリフィンドールの寮監であるミネルバ・マクゴナガルが席を外した時を見計らい愚痴を溢したという次第である。


「今回の試験はイベントのようなものじゃて」
「ここは生徒の教育を図る学校ですぞ。そう遊んでばかりいられては」
「最近は子供らも一般の授業に慣れて、大人しくしとると報告を受けておるがのう」
「……」
「それにこの企画が授業の一環なのは重々承知じゃ。明日のテストも、本当の目的は生徒達にあるからの」


ダンブルドアの発言に動きを止めたセブルス。
そこで大広間の扉が開き、ミネルバが姿を現した。

「校長、仰られたもののご用意が出来ました。直ぐにここへ到着するでしょう」
「ありがとうミネルバ」
「ダンブルドア校長、先程の目的とは……生徒達とは、どういう事ですかな」
「おお、そうじゃったな。簡単な事じゃよ。まず第一の試験では…―――」







「――もし敵に姿を変えられる呪いをかけられたら。動けない、言葉も通じない状況でどうやって味方に自分を認識させられるか」

「しかも相手は赤ん坊だ、知識も理解力も無いに等しい……だろ」


何て難題をふっかけるんだ、あのジジイ。
小さな手で頭を抱えるウィーズリを横目に、僕はこのカオス的状況をどうにか脱する為の策を練った。
制限時間は定められていないのが肝だ。
呪いが解けた者から柵の外に出られるらしいし、赤ん坊にタッチされるのを気長に待てば消去法でいずれクリアできるだろう。
運の良い生徒は既に赤ん坊に触れられて柵の外に出ていた。

「クソ、」
課題の真意を理解できようが、こうも打つ手無しでは……。

何か策は無いのかと、無意識のうちに視線を外に外す。女子生徒達の見守る最前列で、こちらをじっと見つめるナマエの姿があった。





「……ナマエ」

ナマエはドラコと目が合うと、ゆっくりと、目を閉じて頷いてみせた。まるで「落ち着いて」と囁かれたような気さえ、してくる。

――ナマエは、僕が僕だと分かってるのか。

その時、耳に馴染んだナマエの声が頭の中で蘇ってきた。彼女は毎晩、フィオレに子守唄を歌ってきかせていた。

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