狐に帰られてしまって尚、身動きの取れない僕に向かって一直線に走ってきたフィオレ。(なんだと……まさか分かったのか!?)
さすが僕の娘だ!!と歓喜の声を上げそうになったところで、大きな影が体を覆った。


「!!」

僕を持ち上げたのは、目の細い大柄な赤ん坊。一目見れば分かる。

(こいつ、グラップの……!!!)

名前は確か……いや、知らないな。どうでも良すぎて気にもしなかった。
しかしこいつが僕を持ち上げた事によって、先に玩具を奪われたフィオレはがっかり顔で背中を向けてしまった。

だめだ!フィオレ!もっと粘ってくれ!
願い空しく、ピンクのウサギに向かっていくフィオレ。ああああ!それはポッターだ!


『おい!噛むぞこのチビデブ!』と声を上げそうになるが堪える。
チビデブの足元に居た大狸が泣きそうな顔でこちらを見上げていたからだ。ブンブン首を振って僕を見ているところを見ると、たぶんアレはグラップなのだろう。
くそ、どうすればいいんだ。せめて声だけでも出せれば……


そういえば、ダンブルドアは身動きするなとは言ったが、声を出すなとは言っていない!
(バカか僕は!)
「フィオレ!!」
気付くと同時に叫べば、周りの動物達は一斉にぎょっとした顔になった。僕も例外では無い。
「な、なんだ、今の」
叫んだと思ったのだ。確かにフィオレの名前を、それがどうだ!!

「マルフォイ!君いまコンって言ったぜ!」
そう言って笑うドブネズミ(ウィーズリー)の声もまた、キーキーとせわしく走り回るそれと同じであった。

「どうやら、僕らの声は僕らにしか分からないみたいだ」
「じ、じゃあ子供達にはただの動物の鳴き声に聞こえてるってこと!?」
「(このでかいカエル…ロングボトムか)」
「もうお手上げだ!」
「弱音を漏らすなウィーズリー!」
「―――もしかしたら、これは僕らの試験なのかもしれない」


奇抜すぎてどの赤ん坊も寄せ付けないピンクのウサギが(おそらく真顔で)告げた。そしてそれは、僕も先程から考えていたこと。


「一理ある。……っおいコイツ今僕をかじろうとしたぞ!」
「動いたらだめだぞマルフォイ」
「どうしろって言うんだ!!」
動くなと言われてもこう命の危機に晒されてはそうも言っていられない。減点を覚悟で身を捩り、僕はなんとかクラッブjr.から逃れることができた。

「それで、ハリー、僕らの試験ってどういうこと?」
「――うん。これはあくまで僕の仮説だけど、……」

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