「あら、あなた、こんな所で何してるの」

「……パーキンソン先輩」

「3年生は今魔法薬学の授業でしょ?スネイプ先生に怒られるから、早く行………どうしたのよ。」

泣き顔を誰にも見られたくなくて、でも泣くのを我慢するのも嫌で、だけど一人で泣くのも嫌だった。
抱き着いたパーキンソン先輩の服からは、昔ほど香水の香りはしなかった。


「う、っ…せ、んぱい」
「……」
「だっで、好きだったんですよぉ…?わたし」


『こんばんわ!ドラコ先輩、クディッチの試合見に行きますからね!』
『ああ。ありがとう』


『やだ見て!ほら、あそこ…はぁ、格好いいわよね、マッドさん』
『ばっかじゃないの!?ドラコ先輩の方がずーっと素敵。クールで頭がよくて…』


『きいてください!ドラコ先輩!私さっきの授業で、にっくきグリフィンドールに一泡吹かせてやりました!』
『へえ…やるじゃないか。』


「……っ、あのひとに会った事ないなんて言った、けど…ホントはある」


一年生の時だ。
ホグワーツでの生活に慣れてきたと思ったけど、はしゃいで探検していたら道が分からなくなってしまったのだ。
泣きながら途方に暮れる私を見つけて、寮まで連れていってくれたのは…彼女だった。


『一人で恐かったでしょう?もう大丈夫ですよ』
『、うっひっく』
『…もしまた迷子になってしまったら、今度は誰かにちゃんと道を尋ねてみてくださいね。』
『でっ、でも、おし…えてくれなかった…ら?』
『ふふ。…いいえ、教えてくれますよ。

 ホグワーツは私達皆の家で、ここで暮らす私達は、きっと家族のようなものですから』

『…』

黒くて綺麗な髪。レンズの向こうの、優しげな瞳。
オレンジ色のネクタイをしている人が、とても優しくしてくれた。それが妙に、嬉しかったのを覚えている。
(あの時は、ほんの少し、その人がいる寮を望んでしまった)




「僕が護りたいのは、もうとっくに僕じゃない。―――ナマエなんだ。」



あんなに、優しく笑うドラコ・マルフォイを初めて見た。
――あんな顔ができるなんて知らなかった。


「、あのひとじゃながったら…よかったのにっ」

他の誰がライバルでも、負ける気はしない。
…でも



「………っあだしじゃ、あのひとには、かなわな゛い…!!」


たまらずに声を上げて泣く。パーキンソン先輩は、そんな私の肩に腕を回して、頭を撫でてくれた。
先輩も、ボロボロ泣いていた。
「バカな子…。」
なんて言っていたけど。
先輩もでしょ、と私は心の中でそう告げたんだ。

さようなら、小さな小さな、私の初恋。

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