ずっと先輩が好きだった。

お金持ちだし格好良いし、それに何より、スリザリン独特のあの冷酷さがたまらなかった。
何度か話しかけて、ようやく挨拶をかわせる仲になった。
(ドラコ先輩の隣にはパーキンソン先輩がいたけど、でも負ける気なんてしなかったわ!)
先輩の目に留まるよう、美しくなる努力をした。


そんなある日、企画授業の話を聞いた。
悪しきグリフィンドールの女と何ヶ月も一緒に居なきゃいけないなんて、先輩可哀想。
そんなふうには思ったけど、それだけだった。


またある日、ドラコ先輩にグリフィンドールの恋人ができたと聞いた。
正直夢かと思った。






「……お前は、ナマエと話した事があるのか?」

ドラコ先輩の問いに、私は首を振る。

「…………。ありません。」
「そうか。」

あっさり頷いて離れたドラコ先輩。
私に突き付けられていた杖は、既にローブに仕舞われた。


「あの、ど…ドラコ先輩?」

「お前の言う通り、ナマエと付き合うことは、スリザリン生からの僕の評価を著しく下げているのかもしれない」
先輩は淡々と続けた。

「ナマエにはおそらく大勢いる、心許し合う友人が僕に少ないのも、事実だ。」
「!、なら」
「だが、一つ覚えておけ。」

「――!!」

私はドラコ先輩が好きだった。
冷たく笑う表情が。意地悪な物言いが。人を寄せ付けない、その雰囲気が。
なぜって…
わたしが、一人、その中に入りたいと思ってしまったから。

ドラコ先輩の建てた、分厚い壁の中に。わたしだけ…

「僕が護りたいのは、もうとっくに僕じゃない。―――ナマエなんだ。」


だから、こんな先輩、知らない。
私の欲しかった席は、もう、あのひとのものだった

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