久しぶりに寮に戻る用事ができ、渡り廊下を歩いていると、不意に一人の女子生徒に呼び止められた。

「好きです!マルフォイ先輩!」
ネクタイの色は緑。
何度か話した事のある、後輩の女子生徒だ。

「……。」


――忘れていた。
ドラコは、自分の前で顔を赤らめている女子生徒を、どこか離れた場所から見ているような、えらく冷静な視線で見つめていた。
――そうだ。

顔立ちもスタイルも、成績も家柄もいい。
僕のような男を女は普通放っておかないだろう。

自分で周りにそう吹聴しても誰も否定しなかったのは、それは過大評価でも何でもない事実だったからだ。



「ああ。無理だ、悪いな」

冷たすぎる?
忘れてもらっては困る。僕はもとからこういう人間だ。

必要価値の見出せない人間に時間を取る気は無い。


「話はそれだけか?」

「……ッ」

「…なら、僕はもう行く。」

「待って!」
身を翻した途端、背中にドンッと振動を感じた。
それが何かすぐに理解し、眉をひそめた。

「…離れろ」

「グリフィンドールの、ナマエ先輩がいるからですか」

名も知らぬ女子生徒の口から彼女の名前が出た事に、少なからず驚きを覚える。

「皆知ってますよ。ドラコ先輩がナマエ先輩と付き合っている事。だけど、皆思ってます

――企画授業が終わったら、きっと別れるだろうって」

体中の血液が一瞬で沸き立ったような気がした。
気付けば、腹にまわっていたそいつの腕を振りほどき、壁に押し付けていた。

「言ってみろ。誰がそんなくだらないことを言った」

女子生徒は怯えた様子を見せながらも、しかし強気の姿勢を崩さない。

「みんな!言ってます。…っ、あのひとは先輩の嫌いなマグル生まれじゃないですか!おまけにあの、汚らわしいグリフィンドール!――今は近くにいるから、恋してるように思うかも。」
「…」
「だけど、授業が終わって離れたら?冬休みは?先輩のご家族にはなんて??――この先が、幸せばかりだと思ったら大間違いです。」


ドラコによって彼女に無意識に向けられた杖。
女子生徒はそれをそっと握り、ドラコを上目づかいに見つめた。

「……私じゃ、だめですか?」

「…」

「、先輩に酷いこと言いたいわけじゃないけど…でも、ナマエ先輩は誰にでも優しいんです。だから、先輩と別れたって、

――あの人が今まで優しくしてきた色んな人が、あの人に優しくしてくれる…!!」

ドラコは、ガツンと頭を何かで殴られたようなショックを受けた。


「もし、この先上手くいかなくなって、先輩があの人にフられたら、先輩はただの…ッスリザリン寮の笑いものです!」
「…」
「私はずっと先輩を好きでいつづける自信があります!家も代々続く純血だし。マルフォイ家の方との交流もある……

今ならまだ間に合います。遊びだったと笑ってください。つかの間の、暇つぶしと…っ先輩、―――あの人と、別れてください!!」

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