「試験は一週間後だそうですよ」
「へえ…まだ結構あるな」
「一体何を予習させておけばいいんでしょう。」

食事を終えて部屋に戻る途中、フィオレを肩車したドラコが大きな欠伸をしながら答えた。

「何もさせなくていいんじゃないか?」
「何も?」
「ああ。試験内容は当日まで分からないわけだし…、それに、よく考えてみたら合格しようが不合格になろうが、なにかペナルティがあるわけじゃないんだ」

自分達が試験を受ける時は、不合格だった場合、追試験や宿題が山のように出されるのだが、さすがに子ども相手にそんな意地悪はしないだろう。


「そうですね。…なんだか、すっかり自分が受けるような気になってました」
「だろうな。僕も言えたものじゃないが……どうせ受けるなら、こいつにはとことん楽しんでもらいたいと思わないか?」


ナマエはドラコを見上げ、少し想像してみた。

大食い競争で沢山のお菓子を頬張るフィオレ。
四つ葉のクローバーを一生懸命に探すフィオレ。
駆け回ったり、隠れたり、魔法を使ったりするフィオレ。

どのフィオレもたくさん笑顔を浮かべていて…。それは、とても幸せな光景だ。


「…そうですね。ドラコ」

ナマエはそっと腕を伸ばして、ドラコの手を握った。
「!」
ナマエらしくない積極的な行動に、ドラコは思わず言葉を失う。
彼の頭の上で空気をよまないフィオレが、空から舞い降りてくる雪を掴もうと躍起になっていた。


「……ナマエ」
「ドラコは」
「?」

「ドラコは…きっと素敵なパパになりますね」


雪舞う中、白い息をふわりと浮かべながら微笑む彼女の美しさに、ドラコはしばらく呆然と見惚れていた。


「ドラコ…?」
「…」
「ドラコ?……大丈夫ですか?」
「……ッは!」
「…風邪ひきましたか?」
「いや!だい、だいじょうぶ。大丈夫だ。それより早く中に入るぞ…!」
「は、はい」

ドラコに手を引かれながら首をかしげるナマエは、やはり彼の顔に差す赤には気付かないのであった。

(君がママだったら、きっとそうなれる)
(そう言おうと思ったのに、タイミングを逃してしまった。バカか僕は。ハァ)

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