ローさんのお屋敷にお世話になり始めてから2週間が経とうとしていた。ローさんをはじめとするお屋敷の皆さんはとても親切だし、一人暮らしをしていたあの頃よりもよっぽど充実した毎日を送っている気がする。 「ローさん。朝ですよ、起きてくださーい」 「…るせぇ」 「煩くないですよ」 「お前も寝ろ」 「それはむ、うわあ」 ふかふかの羽毛布団から両手が伸びてきて私の手を掴む。あれよあれよという間に布団に引き込まれ、私はローさんにがっつりホールドされる形になった。 ここに来て二週間、私はローさんという人を少しずつ理解し始めてきていた。 ローさんは中々甘えたがりなのだ。 私は斜め上にある端正な顔を眺め、つくづく不思議に思う。 世間一般の評価はおそらく、男前。それは間違いない。私を拾って至れり尽くせりしてれる懐の深さも然りだ。 私は思った。――モテるんだろうなぁ 「ローさんは彼女いないんですか?」 「……あ?いねぇ…」 返事が相当眠たげなのは当たり前だ。昨日は夜遅くまでお仕事をしていたようだから。 (…いないんだ) 勿体ないな。この前の電話の件でローさんが女の人からモテるのは何となく分かった。 でも、ローさんの彼女さんって色々大変そうだ。 ローさんに似合う素敵な女性にならなくちゃとか考えなきゃいけないし、ローさんのこの甘えたがりの性格を知っていたら不安でたまらないはず。 自分の知らない所で自分の知らない女の子に甘えている姿なんて、考えるだけで、とても(………あれ?) とても、何? 「なまえ…」 「、はい」 突然名前を呼ばれてドキッと体が強張る。ローさんは完璧に夢と現実を行き来しているらしく、それから暫く声が途絶えた。私は何故がドキドキと緊張している心臓の音がローさんを起こしてしまうのではと気が気でなかった。 その時、ローさんの目がうっすらと明いた。 私がそろっと見上げると、瞳の藍色もまた私の目を捉える。 「… 」 声に出さずに、もう一度呼ばれた。(なんて優しい顔で) 私は真っ白になった頭でさっきの続きを考えた。 ――とても、何? ローさんが私の知らない誰か綺麗な女の子を、いつも私にするように抱きしめて、こんなふうに優しい眼差しでその子の名前を呼んだら、私は…? 「…っ」 きっと とても辛い。 そして、この感情の理由が分からないほど、私は子供でもなかったのだ。 詐欺師は未だ、 ← → ×
|