ムーンサイド

サイケと臨也






夢を視た。






ネオンの如く目に痛い配色で構成されたその世界で、俺は呆然と立ち尽くして居た。前後左右も無い、只色彩のみが広がる空間。見上げても見下ろしても同じ、不変の世界。

「…我ながら随分とまあ、理解不能な夢を視たもんだね」

強烈過ぎる色合いに目を押さえながら呆れ気味に呟くと、小さく溜息を零す。
夢はそれを視る人間の心境や精神に左右されると云うが、それにしたってこれは酷い。
どうせ色で確立された世界ならば、漆黒や純白と云った、一色統一のものにすれば良かったのに。
何だってこんな、絵具の原色、それも鮮色のみを選んでぶちまけた様な世界を造り出してしまったのだか。

「本当に理解不能だ…」
「ひどいなあ」

只の独り言だった筈の呟きに、何処からともなく言葉を返されて、思わず硬直する。そして、目前に現れた青年の顔を見て、瞠目。

穏やかに緩んだ赤い瞳は少し紫を帯びていて、短髪の黒髪には蛍光的な光を放つ、紫と白を基調としたヘッドホン、そしてその痩躯を包む、白いファーの付いた薄紫のコート。
身に付けているものは違えど、それは間違いなく俺――折原臨也そのものだった。

「――君、は、」

呆然と呟いた言葉に、目前の『俺に似た誰か』はくすくすと笑いを漏らした。それから腕を開いて仰々しく御辞儀をしたかと思うと、楽しげに口を開いた。

「――ムーンサイドヘ、ようこそ!」

細められた瞳が放つ、その不気味で毒々しい色彩に捉われた瞬間、直感的に理解した。
嗚呼、これ、は、









――夢を騙った幻覚なのだ、と。

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サイケデリック=ムーンサイドという安易な考えですみません
サイケはムーンサイドの住人に違いない…!


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