学パロ

高杉×沖田





次の授業は体育である。
体操着に腕を通したところで不と違和感を感じて、小さく眉を潜めて其の原因を探った。

(嗚於、なんだ)

幾分もしない内に其の正体に辿り着いて、それから仕舞った、と内心舌打ちをする。如何して昨日の時点で気付かなかったのだろうか。そして何故、確認を怠ったのだろう。申し訳無さと罪悪感、何より不甲斐無さから溜息を零すと、後ろから声を掛けられた。

「早くしねぇと遅れっぞ」

其の言葉に、壁に取り付けられた古びた時計へと目線を遣れば、成る程、確かに後ものの数分で授業が開始する時間に成るところであった。
ああ、と返事をしつつ、矢張り気にせずには居られない。先に行く様促してから、保健室に居るであろう恋人の元へと向かった。











「沖田」

ドアを開けると同時に声を掛けて、白で統一された室内へと歩を進める。保健医は如何やら不在らしい。

「…たかすぎ?」

俺から見て右側、詰まりは窓側の一番奥に位置するベットから弱々しい声が聞こえて、慌てて其処へ駆け寄りカーテンを引く。
現れた恋人の顔は、元より色白だった肌が血の気が引いて青白くなって居り、痛みの為か辛そうに歪んで居た。

「…悪かった」

さらさらと指を滑る綺麗な髪を梳きながら謝罪を口にすると、きょとんとした様子で沖田は此方を見遣った。

「何で高杉が謝るんでさ」
「いや、だってよ…。昨日…」

バツの悪さに目を泳がせながら言葉を濁すも、何が言いたいのかはしっかりと伝わったらしい。可笑しそうに笑った後、わざとらしく口を尖らせて俺を睨んだ。
其の仕種が堪らなく可愛いくて、心臓がひとつ、跳ねた。

「そうですぜ。誰かさんがあんなにがっつかなけりゃァ、俺も体育出れたのに」
「…悪い」

昨日は確かにやり過ぎた。返す言葉も無い。うなだれて再度謝罪を口にすると、耳に届いた心地良い笑い声。思わず顔を上げると、穏やかに微笑んだ沖田が居て。

「なーんて、冗談でさ。ちぃとばかし痛むだけですから大丈夫ですぜ。それに、俺がやわいのがいけねぇんです。だから、」

俺の髪を優しく撫でながら、にっこり。

「高杉の所為じゃありやせんよ」

――きゅん、と。
そんな音が何処からか聞こえた様な気が、した。

「――っ、沖田っ」
「っわ、」

何だかもう色々と我慢が利かなくなって、其の華奢な体躯を思い切り抱き絞めた。
あうあうと慌てふためく沖田を余所に、抱く腕に更に力を込めると、小さく息を呑む音と、其れを掻き消す様に響くチャイムの音が聞こえた。

「…たか、すぎ、あの、授業…」
「サボるから、いい」

ぎゅうぎゅうと華奢な体躯を抱き絞めて、肩に顔を埋めながらそう言えば、却下の言葉と共に、弱々しくも体躯を押し返された。
其れに幾分か気分を害して、睨む様に沖田を見据えれば、小さく返される溜息。

「只でさえ単位危ねぇんだから、授業くらいちゃんと出なせェよ」
「御前が居ねぇのに、ンなもん出たって仕方ねぇだろ」
「…あんた何しにガッコ来てるんでさ」
「御前に会う為」

はあ、等と大袈裟に溜息を吐いたりなんぞして居るが、其れが照れ隠しである事等疾うに見抜いて居る。其の証拠に、ほら。髪の間から覗いて居る耳が、真っ赤に染まって居る。

「…なァ、沖田」

いいだろ、情事を彷彿とさせる声色で耳元で低く甘く囁いてやると、ぴくりと反応して小さく震える。
常ならば此処で堕ちるのだけれど、如何やら今日はそうはいかないらしい。
何かを振り払う様にふるふると首を左右に振った後、鋭い目付きで此方に向き直って口を開いた。

「…っ、駄目、でさ!」
「んだよ。俺に居て欲しくねぇってか」
「違いやすよ」

もう、と困った様に笑いながら俺の頬に触れると、そのまま掌で包み込まれた。
ひんやりとした感触が心地良くて、むくれて居た心が少しだけ穏やかになるも、其れでも矢張り納得いかなくて、抗議の言葉を投げ掛ける。

「じゃあ、如何して」
「これからもずうっと高杉と一緒に居たいから。って言ったら、解ってくれやす?」

こてん、首を傾げて眉を八の字にして言う沖田に、直ぐに其の意味を理解した俺は、気分が晴れていくのを感じた。沖田も其れを悟ったのだろう、此方を見ながらくすりと笑った。

「ほら、解ったならさっさと行きなせェ!俺は、こっから見てやすから」

直ぐ横に在る窓を指差しながらそう促されて、そういえば此処の窓からはグラウンドが見えるんだったか、と思い出した。試しに其方へと視線を向けると、丁度銀時がサッカーボールをゴールから盛大に外したところで、思わず笑ってしまった。

「…ほら、楽しそうですぜ、サッカー。俺の分迄きっちり暴れて来て貰わねぇとねィ。…それに、」

けらけらと笑ってそう言った後、不自然に間を置いて付け加えられた言葉に疑問符を浮かべて居ると、沖田はちらりと此方を窺い見てから、小さく続きを口にした。

「…スポーツやってる高杉格好良いから…、見たい、し…」

――思わず、硬直してしまった。
そんな俺に気付いていないのか、沖田は何か思い出した様にあ、と声を上げると、慌てて俺に向き直って、にっこり。

「勿論、高杉は何時だって格好良いですけどねィ」

可愛い過ぎる其の笑顔に、くらりとする。
切れそうになる理性の糸を残り少ない其れで何とか抑え付けて留まらせながら、表面では何ともなし顔を貼付けて、「そうか」なんて素っ気なく言い放ってはみるものの、其れは照れ隠し以外のなにものでもなく。
どうせ此奴にはバレてんだろうなと心中でぼやいて居ると、案の定、耳に届いたくすくすと云う笑い声。

「可愛いねィ高杉」
「…ンな事言うの、御前だけだ」
「じゃあ、みんな高杉の事解ってないんですねィ。勿体ねぇや」
「別に、御前が解ってくれてんなら、俺は其れで良いけど。つーか、御前以外如何でも好いし」

真っ直ぐに其の碧い瞳を見詰めてそう言うと、面白い位に顔に赤みが増していく。其れを見られまいと頬を両の手で必死に隠しながら、「ば、馬鹿じゃねぇですかィ!?」と叫んだ沖田は、次いで小さく溜息混じりに言葉を零した。

「もう…っ。あんたは何でそう、小っ恥ずかしい事を真顔で言えるんでさァ。ホストにでも成ったら如何ですかィ?」
「あァ、そいつァ無理だね。言ったろう?御前以外如何でも好い、ってよ。俺が口説くのも歯の浮く様な臭ェ台詞吐くのも、全部御前だけだ。御前じゃなけりゃ言わねぇし、抑言えねぇよ、ンなもん」
「……っ、そ、ですかィ」「あァ。其れから御前、先刻俺が可愛いとか抜かしてたが…、俺からしてみりゃ、そりゃ御前の方だ」
「…嬉しく、ねぇし……」
「そうかい。そいつは失敬。でも俺は、可愛いと思うぜ」

黙ってしまった沖田の顎を掬って視線を無理矢理絡ませると、先程迄の威勢は何処へやら、困った様に眉を下げて熱に浮かされた様な――、そんな蕩けた表情を浮かべて此方を見詰めてくるものだから、正直、堪らない。
昨晩の事だとか、授業の事だとか、そんなもんが一気に吹っ飛んで、嗚於、もう如何でも良――くは、ない。

危ない。雰囲気で勢いづくところだった。
寸でのところ我に帰り、慌て頭を振って沖田から離れる。そうだ。昨晩。
俺ががっつき過ぎた為に此奴はこんなに苦しんで居るのではなかったか。体調が宜しくない恋人相手に盛る等。同じ過ちを犯してしまうところだった。嗚於、危ない。






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収拾つかなくなったので止めました
ずっとバカップルのターン\(^O^)/


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