*PHパロ高沖




只の偽善者だと、思っていた。

屈託のない無邪気な笑顔を振りまき、誰にでも分け隔て無く接する。

そうしてアイツは皆に可愛がられ、皆に愛された。

―…憎かった。

皆に守られ、その中心でのうのうと生きているアイツが憎かった。


――……それ、なのに





「あれ?晋助?」

自分の名が聞こえ、瞼を開ければ栗色の髪が光に反射し輝く。
その眩しさに一瞬目を細めれば、ソイツは俺の寝ている草むらが日陰になるよう移動してくれた。

「こんな所で何してんでィ」

「…テメェには関係ねェだろ」

上半身を起こし、肩に付いた草を払う。
と、頭に何か触れる感触。

「…ッ!?」

「頭にも付いてる」

ほら、と言って手に持った草を俺に見せる。
俺の大嫌いな笑顔を浮かべて。

「触んじゃねェよ」

手をパシッと払いのければ沖田は一瞬驚いたような表情をした後、再び笑顔になる。

「なんでィ。相変わらずつれねェな」

俺の隣に普通に座る沖田。
離れようかとも思ったが、自分が他人の為に動くのはどうにもプライドが許さない。

「沖田、お前分かってんのか?」

「何が?」

キョトンとした瞳で俺を見つめる沖田の表情に溜め息を吐く。

コイツは誰にでも分け隔て無く接する。
例えそれが、敵対する家系に生まれた者であっても。

「前から思うんだけどさ…」

沖田は両手を後ろにつき、空を仰ぎ見る。

「家系とか、関係ねぇと思う」

「…ハァ?」

何を言っているんだコイツは?
家系は関係無い?
俺は両親達にずっと、お前達は偽善者で卑怯な奴らだと教え込まれてきたんだぞ。

「例え親同士の仲が最悪でもさ、」

紅い大きな瞳が俺を見上げる。
何故だかその瞳に、嫌な気は全く起きない。

「俺達は、仲良くしてたっていいじゃん」

照れ臭そうに小さくそう呟いた沖田。
その顔は、熟れた林檎のように真っ赤で。

「…………ぷっ」

「っ!」

しまったと思った。つい吹き出してしまった。
だが今はコイツに弱みを見せたくないだとか、そういうのは一切気にはならず。

「わっ、笑わなくたっていいだろィ!」

あたふたと慌てる沖田はどこか小動物のように見えるのは気のせいだろうか。

「だ、だって俺さ…」

生理的に滲んだ涙を拭い、沖田を見れば困ったような笑顔。

「俺、晋助と一緒にいてぇもん」

その言葉を沖田が口にした途端、ピタリと時間が止まる。
俺と、一緒に居たい…?

「うっ、嘘!今のナシ!ナシ!!」

顔をこれでもかというほど真っ赤にさせ、首と両手をブンブン横に振る沖田。

「…さ、さあ!俺ァ姉上が心配するからもうそろそろ帰ろうかねィ!」

バッと立ち上がりワザとらしく伸びをする沖田を見上げる。
家系など関係無く、俺達は仲良く…?
そんなこと、出来るわけがないのに。

だが、俺の本心は…?


「…沖田、」

「?なに?しんす、」

俺は沖田が振り向いた瞬間に腕を引き、自分の腕の中に抱き締めた。

家系など関係無いとコイツは言った。

だったら…、

少しぐらいは、信用してやろう。

俺は小さく芽生えていた心を隠しながら憎い奴を抱き締め続けた。




END

――――――
あんぜんぴん。のはんなりさまから誕生日プレゼントに頂いちゃいました…!
ベザリウスとナイトレイな高沖という無茶ぶりに対して、快く引き受けて下さった上にこのクオリティの高さ…!
あなたが神か!を何度連発したことか…!←
素敵な高沖をありがとうございました><







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -