*臨也×正臣




じわじわと。
体躯の深奥から蝕まれていく感覚。若しかしたらそれは内奥からではなくて、例えば触れ合って居る指先からかも識れないし、或いは俺を捕えて離さないその赤い瞳からかも識れないし、抑、始めから侵食等されていないのかも識れない。
それでも、他にこの沸き上がる熱とよく解らない衝動とを説明する言葉が見付からないから、矢張りこれは侵食なんだと思う。

じわじわじわじわ。
それは血液に混じって体躯中を循って、そうして浸透していく。一度侵入されたら最後、抗体なんて有る筈もなくて、抗ことも出来ずに只只身を委ねるだけ。そうしているうちに何れは脳まで到達したそれに侵されて、人格までもが崩壊する。そうして、心身共に欠落してしまった俺を見て柔らかく微笑む彼を見て、再び俺は蝕まれていく。そんな無限ループが嫌などころか心地好く感じるなんて、嗚呼、もう末期だ。

「正臣くん、」

甘い甘い優しい声色。その綺麗な赤い瞳を細めて俺の名を呼ぶ彼に、なんですかと答えれば、うん、と嬉しそうに返される。嗚呼、嗚呼、侵食、していく。

「好きだよ」

侵食、していく。
侵されて、冒されて、犯されて。もう、自分が何なのか誰なのか、それそらも解らない位に。
穏やかな調子で紡がれる甘美な毒が体躯を巡る廻る循る。蝕まれていく俺を見て、彼は薄く笑って小さく呟きを漏らした。

「――なんて、嘘だよ」

けれど、それがどんな意味を孕んでいるのか、今の俺にはもう、解らない。わから、ない。

「いざや、さん」

てを、のばす。ほそくてほねばった、きれいなてがおれのそれをつかんで、つつんでくれる。そのことにひどくあんどして、ひきよせられるようにそのままかれのむねへとみをよせて、そのあまりのここちよさにめをとじる。ああ、ああ、

「正臣くんも壊れちゃったなあ。まあ、いいや」

いざやさんが、やさしくせなかをさすってくれる。なにかをささやきながら、ゆっくり、ゆっくり。でも、なんていっているのか、わからない。もしかしたら、ほかのくにのことばなのかもしれない。わからない。

「――代わりなんて、直ぐに見付かるだろうしね」












わから、ない。











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