潤也→安藤
*突発文






白、白、見渡す限りの白。
息苦しささえ感じる白に支配された世界で、何をするでもなく、只呼吸をする。酸素を吸って、二酸化炭素を吐いて、又酸素を吸って、二酸化炭素を吐く。それの繰り返し。ずっと、ずっと。










そうして、俺は兄貴の言葉で目を覚ます。潤也、起きろ。その言葉で、救われる。真っ白で何もない世界から、兄貴は俺を連れ出して、在るべき場所に戻してくれる。有り難う、思わず口に出すと、兄貴は不思議そうな顔をした後、小さく笑いながら俺の頭を撫でてくれた。嗚呼、その笑顔だけで俺は幸せになれるよ。本当だ、本当なんだ。だから、だから――











白、白、見渡す限りの白。
天井も壁も床も全部、視界に入るもの全てが白い。白で統一された、真っ白な空間。
息苦しささえ感じる白に支配された世界で、何をするでもなく、只呼吸をする。酸素を吸って、二酸化炭素を吐いて、又酸素を吸って、二酸化炭素を吐く。それの繰り返し。ずっと、ずっと。










如何やら昼寝ならぬ夕寝をしてしまったらしい、廊下から兄貴の声が聞こえる。潤也、飯出来たぞ、だってさ。それに今行くよと答えながら、悪いことしちゃったなと思う。料理がてんで駄目で兄貴に任せっきりな代わりに、食器を出したりテーブルを拭いたりするのは俺の仕事だったから。それに、一人であの広いリビングに居るのは泣きそうになる程寂しい。そう、寂しい。本当に、胸が押しつぶされる位――











白、白、見渡す限りの白。
天井も壁も床も全部、視界に入るもの全てが白い。白で統一された、真っ白な空間。服も、腕も、みんな真っ白だ。そんな、白で構成された世界で、俺の腕から伸びる沢山の黒だけが異質だった。
息苦しささえ感じる白に支配された世界で、何をするでもなく、只呼吸をする。否、それしか出来ないから、呼吸をする。酸素を吸って、二酸化炭素を吐いて、又酸素を吸って、二酸化炭素を吐く。それの繰り返し。ずっと、ずっと。毎日、毎日。












目を開けたら、兄貴が酷く不安そうな顔で俺を覗き込んでいた。如何したの、兄貴。如何してそんな顔してるの。何かあったの。ねえ、答えてよ、答えてよ兄貴。兄貴が口を開く。何、何て言ったの、聞こえないよ兄貴。もっと大きな声で言ってくれないと、いって、くれない、と、おれ、おれは、

――潤也、

やっと、漸く聞こえた兄貴の声。兄貴が俺を呼ぶ声。なのに、兄貴が遠くなる、どんどん見えなくなって、霞んでいく。兄貴、兄貴、何処行くんだよ。行かないでくれよ、いかないで、逝かないで――









「――っ、兄貴!!」

目を覚ました俺の視界に飛び込んできたのは、白、白、見渡す限りの白。
天井も壁も床も全部、視界に入るもの全てが白い。白で統一された、真っ白な空間。服も、何も掴むことはなかった、虚しく伸ばされたままの包帯だらけの腕も、みんな真っ白だ。そんな、白で構成された室内で、俺の腕から伸びる沢山の管だけが黒く、異質だった。
息苦しささえ感じる白に支配された病室で、何をするでもなく、只呼吸をする。否、それしか出来ないから、呼吸をする。旋錠され隔離されたこの部屋から出ることなんて出来やしないのに、病院の対応は厳重なことで、俺の体躯までもを拘束している。だから、呼吸しか出来ない。するしか、ない。吸いたくもない酸素を吸って、吐きたくもない二酸化炭素を吐いて、又酸素を吸って、二酸化炭素を吐く。それの繰り返し。ずっと、ずっと。毎日、毎日。でも、良いんだ、別に。これは只の、









「――夢だから。ねえ、兄貴」









そうして、俺は今日も又、兄貴の言葉で目を覚ます。










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錯乱気味な弟くんのお話
補足的な↓
兄貴が死んだと認めたくないが故に、現実と夢がないまぜになってます
基本は夢が潤也にとっての現実(つまり、兄貴が生きてる世界が潤也にとっての現実)だけど、兄貴が死んだという事実は矢張りどんなに逃避しても夢にも反映されてしまう為、少しでも夢の中で兄貴が死んだことに触れると目を覚まし、また直ぐに夢を見て、を繰り返します
夢と現実の境が認識出来ていないので病院に入院中…みたいな、そんな話になってるといいな←

タイトルは三大宗教がひとつ、我等が移動王国の某曲から。







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