潤也→安藤
*にょた






朝目が覚めると、性別が反転していました。
そう言って信じてくれる人間は、一体どの位居るのだろう。少なくとも俺だったら先ず信じないだろうな。
寝起きの為か或いは現実逃避の為か、少々ずれたことを考えながら、昨晩までは確かに無かった筈の胸の膨らみを呆然と見つめた。

(なんでこんなことに…そもそもこんなこと現実に有り得るのか?いきなり性別が変わるなんて…。というか、本当に変わってるのか…?)

胸はある。
寝間着代わりに着ているTシャツが胸の辺りで不自然に膨らんでいるから、それは間違いない。確かめずとも解る。
――問題は、下が如何なっているか、ということで。

(完全に女になったとしたら無い筈だ…でももし不完全だったら…?嗚呼もう、せめて原因さえ解れば…!)

ズボンを脱いで確かめてみれば済む話なのだが、恐怖やら羞恥やらが邪魔をして中々行動に移せない。好奇心もあることにはあるが、それでもやっぱり恐ろしい。

(もう、如何したら…!)

頭を抱えて途方に暮れていると、突然明るい声と共に部屋のドアが開いた。

「あーにーきっ!俺、今日はちゃんと自分で起きられた――って、兄貴?」

現れたのは制服を身に纏った弟で、珍しく自力で目覚めたことを報告がてら起こしに来てくれたらしい。
布団を頭からすっぽり被った俺を視界に捉えた瞬間、如何した?具合悪い!?と心配そうに駆け寄って肩を掴まれる。それに大丈夫だからと宥めるように答えれば、渋々ながらも手を離した。

「兄貴、何時もより細い気がするし、声もなんか変だし…。本当に大丈夫?」
「大丈夫だって。多分、風邪かなんかだろ」
「でもさ…!」

まさか女になったからです、なんて言えるわけもなく、誤魔化すように曖昧に笑う。幾ら弟だからって信じてくれるとは限らないし、何より心配掛けたくない。

「ありがとな。でも大丈夫だから」
「……っ!」

安心させるように出来るだけ柔らかく微笑めば、何故だか潤也は目を見開いて、そのまま顔を逸らした。心なしか、耳が赤い気がする。

「潤也?」

滅多にない反応を不思議に思って顔を覗き込めば、そこには赤面した潤也の顔があって、先刻のは見間違いではなかったんだなと確信する。如何したんだ、と続けて声を掛ければ、目を泳がせながらえっと、だのその、だの何とも歯切れの悪い答えが返ってきて、ますます不安になる。

「あ、兄貴、さ…」
「うん?」
「……っ、やっぱり何でもないっ」

そう云うが否や物凄い勢いで部屋から出て行ってしまった弟を不思議に思いながら、ひとり首を傾げた。















「――なんでそんな可愛いんだよ、兄貴…っ」

逃げるように自室に戻った弟が、顔をこれ以上ない程赤くさせて呟いた言葉を、兄が知る由もない。








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もしも副作用で体が女になってしまったら、で潤安
潤安というか潤→安ですが^^;







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