with YOU


12月に入ると、年末が迫る慌ただしさが局内のそこかしこに見えてくる。
収録が終わり楽屋に戻ると、正面の窓ガラスから見える藍色の空に白いものがチラつくのが見えた。

「もしかして…」

暖かい局の中にいると、どうしても天気や気温には鈍感になる。思わず窓際に駆け寄って目を凝らした。

「やっぱり、雪…」

今日は朝から気温が低く、迎えに来てくれた山田さんの車にも「今日は冷えるから」と膝掛けが用意されていた。
そういえば、ニュースで「初雪が降るかも」って言ってたっけ。

「慎之介さん、気付いてるかな」

ささやかなことも一緒に喜んでくれる慎之介さんに知らせようとバッグからスマホを取り出すと、新着メッセージを知らせるランプが点滅していた。

“なまえちゃん、お疲れさん!
今日予定より早く終わったんやけど、一緒にメシでも行かん?
終わったら連絡してな〜”

文面から慎之介さんのあの満面の笑顔が目に浮かんで、思わず微笑む。そのまま電話帳を開くと、慎之介さんの名前をタップした。


「なまえちゃん、お疲れ!終わったん?」

「お疲れ様!今終わったよ」

「今日はそれで終わりやったよね?…デート、してくれる?」

なぜか少し不安気な声を出す慎之介さんに苦笑する。

「もちろん、喜んで」

「やった!ほんなら局まで迎えに行くわ」

「うん、ありがとう。今おうち?」

「…実はな、すぐ近くにおるんよ。なまえちゃんが連絡くれたらすぐ行けるように、ドライブしながら待機しとった」

「ふふっ、そうなんだ。じゃあ、お願いします」

「任しといて!すぐ行くから!」


通話が終わったスマホをしまいながら、嬉しそうな慎之介さんの声を思い返して愛おしさがこみ上げる。
不意に空いた時間を、一緒に過ごしたいと思ってもらえることが嬉しくて。
こういうの、バカップルっていうのかな。
そんなことを考えてひとり恥ずかしくなり、慌ててにやけた顔を引き締めると着替えに取りかかった。




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