雪がしんしんと降り、吐いた息が白み消えていく。床から見る景色は変わり映えが無く、いい加減飽き気がさす。唯一の僕の暇つぶしとも言える千鶴ちゃんは未だ来ない。きっと天気が悪いからと町の人達に止められてるんだろうけど。あの子、年齢とか関係なしにみんなから好かれてるし。「……千鶴ちゃん」呟いてみたが、すぐに空気と融解していく。どことなく千鶴ちゃんを意識してるみたいで嫌だからこれで良い。……何故嫌だとか、それすらも分からないけど。ああ、労咳って頭までも弱くなるのかな。だとしたら、僕が第一発見者だ。松本先生が喜ぶだろうね。
 脈絡のないことを延々と考え、眠気により意識が朦朧としてきたところで瞼を閉じる。






「沖田さーん!」


 雪と共に聞こえる音は千鶴ちゃんの声。そうだ、きっとこれは明晰夢だ。あの人達も土方さん並に過保護だから、行かすわけないからね。まあ、それでもこの子に会えるならば夢の中でも、……良い。



「……沖田さん?」

 何で。

「…寝てるんでしょうか」

 馬鹿みたいじゃないか。

「お昼寝の邪魔、しない方が良いですよね……」

 千鶴ちゃんに対して、こんなこと思うなんて。




 己の感情の意味すら理解出来ぬまま目を開けると、千鶴ちゃんの顔が目前にあった。鼻と鼻が付くくらいの距離だ。一瞬びっくりしたがおはようと言うと、「きゃああ」とか「ひいい」、って可愛いのかホラーなのかよく分からない悲鳴が聞こえた。正直に言うと叫びたいのは僕の方だ。でもまあ、代わりに千鶴ちゃんの可愛い姿が見れたのだからそこは我慢しよう。


「千鶴ちゃん、顔真っ赤」

「ち、違います!これは寒かったからで…!」

「ふうん、そのわりには凄く動揺してるけど」

「〜〜っ!!」

 ぷしゅううう。そんな効果音が合うだろうか。思わず凝視すると湯気が出そうな勢いで余計に顔が赤くなり、更には高速で後退りまでし始めた。


「千鶴ちゃん、危な…」

「っい!!?」


 縁側から落ち、ずぼっと心地よい音が耳に残る。奇声第二弾勃発だ。
 雪に体を埋めながら目を丸くする千鶴ちゃんが可愛くて思わず哄笑すると目元に涙が溜まる。久しぶりに笑ったからかお腹が痛い。必死に再発しそうな笑いを堪え、床から這い出て手を伸ばした。


「大丈夫?」

「……も、もう来ませんからっ!!!」


 この感情の名前は知らないけど、短くて長い時間が僕にはある。だから、これからゆっくりと解明してけば良いのだ。
 目の前の小さくて可愛い生き物は寒そうに体を震わせ、僕の手を取った。
 さっきまでの威勢は一体どこに行ったのやら、ね。



さあ、今日はもうお休みなさい

んーじゃあ、僕の睡眠を妨げた罰として、はい、一緒に寝ようか




べた惚れ様に提出



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